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ライバル企業に特許を取られても慌てない

2012.08.29

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ライバル企業が特許を取得し、その特許の権利範囲に自社製品が含まれていると大変です。
ただ、必要以上に慌てる必要もないと思います。
審査官は、数時間程度のサーチを行なって、その範囲内で見つかった先行技術に基づいて審査を行い、進歩性等の特許要件を否定する根拠が見つからなければ特許します。年に200件以上の出願を処理することが事実上義務付けられている状況を考慮すれば、1つ1つの案件にそれほど時間はかけてられません。
当事者は違います。ライバル企業の特許に自社製品が含まれていると大変ですので、なんとしてもその特許を潰さなければなりません。そうすると、1つの案件の調査に何日でも時間を書けられますし、日本の特許だけではなく、欧米の特許文献や学術文献も調査範囲に含めることができます。
このように、審査官の調査と当事者の調査は、真剣さの度合いが全く異なりますので、当事者が調査を行うと、審査官が見つけることができなかった強力な文献が見つかることは頻繁にあります。
また、パラメーター特許などでは、そのパラメーターが記載されている文献が審査官は一生懸命探そうとして、「本願請求項1で規定されているパラメーターを開示している文献は見つからない」なんていう特許メモを残して、一発特許にするような案件も頻繁にあります。しかし、パラメーターが出願人が独自に設定した特殊なものである場合、それにぴったりと来るようなものが先行文献に開示されていることは稀ですので、その戦略では、なかなか良い文献は見つかりません。こんな場合は、実施例と同じ型式の材料が使用されている文献を探します。同じ材料・製造条件を開示している文献が見つかることは結構頻繁にあります。しかも、同じ出願人の出願です。つまり、出願人が公知材料をパラメーターで規定して、別の特許を取得したということです。このように、ちょっと視点をを変えると、審査官が見つけられなかった強力文献を見つけることは難しくない場合があります。
また、侵害訴訟の多くは、特許無効の抗弁が認められて権利行使ができない、という判断で終わっています。
このように考えると、審査官による特許査定は、特許性に関する一応の判断であると考え、特許されたもののうち、半分以上は無効理由を有すると考え、その特許に対抗する手段を考えるのがいいと思います。
対抗手段は、先使用権の主張の準備、無効資料の準備、無効審判請求などが考えられます。無効審判請求は、真っ向から喧嘩をふっかけることですので、あまりやられません。そこで、無効資料の準備+鑑定書の作成といった作業が行なって、いざというときに対応可能な状態にしておくことが多いようです。

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