ブログ

審査官は特許査定したくてうずうずしている

2012.08.27

SKIP

実務経験が浅い頃は、審査官は拒絶理由を通知したくてうずうずして、なんとかこの出願を拒絶査定に持ち込めないか、頑張っているという印象を持つことが多いですが、経験を積むに従って、だんだんと審査官は特許査定したくてうずうずしているという感覚になってきます。
審査官は、拒絶理由通知を打つためには、まず、明細書を読み込んで、先行技術調査を自分で行ったり外注したりして、関連文献を探します。案件ごとに、500件程度の文献には目を通すそうです。その中から最も適切であると思われる文献を選んで、拒絶理由通知を作成します。
出願人側にも当然言い分がありますので、拒絶理由通知に対してはメタメタに反論され、新たな構成要件を追加されたりして、また、調査のやり直しかぁ。。なんてことを考えて、最後の拒絶理由通知を作成したり、拒絶査定を打ったりします。
真面目に拒絶査定を打っても、多くの場合は、審判請求されてしまいます。審判で特許審決が出てしまうと、直ちには評価が悪くならないにしても、そのような案件が連続すると、やはり庁内での評価は落ちてしまいます。
このような作業を毎年200件も行わなければなりません。拒絶理由を打っても打っても反論される日々。大変な仕事であることは想像にかたくありません。
明細書も分かりやすいものばかりではないでしょう。分からないのが、明細書のせいなのか、審査官自信の読解力・技術的知識の不足によるものなのかを判断することは容易ではないでしょう。ダメな審査官は、分からなかったらすぐに記載不備にするでしょうが、真面目な審査官は、ギリギリまで理解する努力をするようです。
このような苦しい状態から逃れる方法が1つあります。それは、何も考えずに特許査定を打つことです。特許査定を打つためには、先行技術調査は、必要ありません。拒絶理由を発見しなければ、それで終わりです。審判請求されることもありません。異議申立は廃止されました。無効審判は、特許20万件に対して、毎年200件なので、極めて稀です。
審査官にとって特許査定を打つことほど楽なことはありません。それでもあえて、拒絶理由通知を打つ理由は、審査主義の下で特許制度を支えているという審査官としてのプライド、特許査定を出すための上司の説得が大変、特許査定率が高すぎると評価に響くなどが考えられます。
拒絶理由通知への応答方法を検討する際には、必ず、「審査官は特許査定したくてうずうずしている」と考え、「審査官の背中をもう一押しする材料は無いかなぁ」なんて考えながら検討します。拒絶理由通知に対して真っ向から反論して審査官と対立構造を形成する、なんてのは、ダメな実務だと思います。審査官に喧嘩を売っているような意見書を書く実務家もいるようですが、審査官は、出願人の最大の味方であると認識して、実務をする方がいいと思います。

アーカイブ