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部分意匠と全体意匠による複合的保護

2012.09.11

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部分意匠で出すか、全体意匠で出すか、悩ましいものです。
権利範囲の観点からは部分意匠の方が有利な場合が多いと思います。実線部分のみで類否が判断されるので、それ以外の部分が違っていても類似と判断される可能性が高いからです。
権利化の観点からは、どちらがいいか微妙だと思います。部分意匠は、細部の特徴が際立つので、全体から見ると小さくて目だたない部分であっても、その細部をクローズアップすると、特徴的に見えて登録されやすくなると言えます。一方、実線部分以外の部分は考慮されませんので、その点で不利に働くことがあるかも知れません。拒絶理由にしても、全体意匠だと、全体がほぼ全く同一というデザインはあまりありませんが、部分意匠だと、ほぼ全く同じデザインが提示されることがあります。従って、デザインの性質によって、部分意匠がよかったり、全体意匠がよかったりします。
一番重要な自己実施の観点ですが、全体意匠を出願しておけば、その一部に相当する部分意匠は、権利化されません(3条の2)。一方、部分意匠を出願しておいても、その部分意匠の特徴部分を含んでいて、かつそれ以外の部分が平凡なデザインであるような全体意匠が出願されると、登録されてしまうことがあります。登録されてしますと、部分意匠の権利者は、上記全体意匠と同じデザインを実施できません。従って、部分意匠登録出願は、自己実施の観点からは無力だといえます。部分意匠と全体意匠は、先後願関係が判断されないので、実質的に同じようなデザインであっても、部分意匠と全体意匠の両方が登録されてしまいます。
意匠は、何よりも自己実施の確保が重要ですので、まずは、自社が実施するデザインの全体意匠の出願を行うことが重要です。そして、お金が余ったら、他社が類似デザインを実施できないように、部分意匠出願をするのがいいと思います。

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