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三倍賠償について

2010.10.27

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米国では、故意侵害の場合には、損害額が三倍にされてしまうとのことで、「故意」であるとの認定を避けるために、米国特許弁護士から「非侵害」の鑑定書を入手したりします。
ところで、「三倍賠償は米国特許法で規定されている」との言い方がされますが、少し正確ではないと思います。
英米法では、不法行為一般について懲罰的損害賠償請求が認められていて、その上限は明確な規定がありません。過去には損害額の数百倍もの損害賠償が地裁レベルでは認められたこともあるようです。限度がないのはあまりにもひどいので、判例法や州法(米国では不法行為は連邦法ではなく州法で裁かれます。従って、どの州で人を殴ったかによって適用される法律が異なります)で制限される傾向にあります。

米国特許法284条で規定されているのは、「損害額を三倍にできる」という規定ではなく、「損害額は三倍までにしかできない」という規定です。

§ 284. Damages
How Current is This?
Upon finding for the claimant the court shall award the claimant damages adequate to compensate for the infringement, but in no event less than a reasonable royalty for the use made of the invention by the infringer, together with interest and costs as fixed by the court.
When the damages are not found by a jury, the court shall assess them. In either event the court may increase the damages up to three times the amount found or assessed. Increased damages under this paragraph shall not apply to provisional rights under section 154 (d) of this title.
The court may receive expert testimony as an aid to the determination of damages or of what royalty would be reasonable under the circumstances.
日本では、商標権についての小僧寿し事件最高裁判決で以下のように述べられているように、実際に発生した損害以上の損害賠償請求は認められていません。
「商標法三八条二項は、同条一項とともに、不法行為に基づく損害賠償請求において損害に関する被害者の主張立証責任を軽減する趣旨の規定であって、損害の発生していないことが明らかな場合にまで侵害者に損害賠償義務があるとすることは、不法行為法の基本的枠組みを超えるものというほかなく、同条二項の解釈として採り得ないからである。」

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