米国で後発医薬品製造承認のための試験は合法
2010.10.08
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後発医薬品を製造販売するには、監督機関からの承認が必要ですが、その承認を受けるにはある程度の時間が必要なので、特許権の消滅後にすぐに後発医薬品の製造販売を始めるには、特許権の存続期間中に承認のためのデータ取りを行う必要があります。このデータ取りを行うには、特許製品の製造を行う必要があるので、その行為が特許権の侵害になるかどうかが問題になります。
日本では、「シル酸カモスタット事件」(平成 10年 (受) 153号 医薬品販売差止請求事件 )の最高裁判決で以下のように判示されて、このような行為は、特許法69条1項の「試験又は研究」に該当することを理由に侵害にならないと判断されました。
二 【要旨】ある者が化学物質又はそれを有効成分とする医薬品についての特許権を有する場合において、
第三者が、特許権の存続期間終了後に特許発明に係る医薬品と有効成分等を同じくする医薬品(以下「後発医薬品」という。)を製造して販売することを目的として、その製造につき薬事法14条所定の承認申請をするため、特許権の存続期間中に、特許発明の技術的範囲に属する化学物質又は医薬品を生産し、これを使用して右申請書に添付すべき資料を得るのに必要な試験を行うことは、特許法69条1項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たり、特許権の侵害とはならないものと解するのが相当である。
一方、米国では、1984年4月にRoche v. Bolar事件において、後発医薬品の製造承認のための試験は特許権の侵害になると判断され、これを受けて、議会が以下に示すような条文を作成し、後発医薬品の承認のためのデータ取りを合法にしました。
35 U.S.C. 271 Infringement of patent.
(e)
(1) It shall not be an act of infringement to make, use, offer to sell, or sell within the United States or import into the United States a patented invention (other than a new animal drug or veterinary biological product (as those terms are used in the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act and the Act of March 4, 1913) which is primarily manufactured using recombinant DNA, recombinant RNA, hybridoma technology, or other processes involving site specific genetic manipulation techniques) solely for uses reasonably related to the development and submission of information under a Federal law which regulates the manufacture, use, or sale of drugs or veterinary biological products.
なお、この条文は、後発医薬品の製造承認に限定されず、FDAに提出するデータを取得する目的であれば、新薬開発のための前臨床試験にも適用されることが、Merck KGaA v. Integra LifeSciences I, Ltd. 最高裁判決(2005年)事件で明らかにされました。
参考文献:
20 米国の医薬・バイオ関連分野におけるプロパテント政策の動向