ブログ

特許翻訳:「~を含む」「~を有する」「~を備える」「~から構成される」など表現の英訳

特許

2025.01.22

伊藤 寛之

クレームにおいて使用される、「~を含む」「~を有する」「~を備える」「~から構成される」などの表現は、日本語では主に制限語句と非制限語句の二種類に分類されます。前者(制限語句)には、「~から構成される」などが該当し、「~」に列挙された要素のみを含む構成がクレームによって保護されます。一方で、後者(非制限語句)には、「~を含む」「~を有する」「~を備える」などが該当し、「~」に列挙された要素以外を含む構成もクレームによって保護されます。

英語のクレームにも、同様の分類が存在しますが、その中間的な表現(middle phrase)やいずれにもはっきりと分類できない表現も存在するため、それらをまとめて以下に示し、簡単に説明したいと思います。

制限語句(closed phrase)

英語のクレームにおける制限語句としては、

”consisting of”

が該当します。例えば、”A package consisting of A, B, C, and D.”というクレームがあるとすると、要素A,B,C,Dに加えて要素E,Fなどを含むpackageは権利の範囲外となります。

非制限語句(open phrase)

英語のクレームにおける非制限語句としては、

“comprising”
“including”
“containing”
“characterized by”

が該当します。例えば、上の制限語句の例で言うと、要素A,B,C,Dに加えて要素E,Fなどを要素として含むpackageも権利の範囲内となります。

中間的な表現(middle phrase, semi-open end phrase)

制限語句と非制限語句の中間的な効果を持つ語句としては、

“consisting essentially of”

が該当します。この中間的な表現が使用された場合、クレームで記載された構成に影響を与えない要素であれば、クレームに記載されていなくても、そのような要素を含む構成も権利範囲内となります。例えば、再び上の制限語句の例を使うと、クレームに記載されていない要素E,Fを要素A,B,C,Dに加えた場合に、要素A,B,C,Dで構成されるpackageに何らかの作用効果を及ぼさない場合は権利範囲内となります。

その他の表現

上の3つの分類にはっきりと分類できない表現もあります。例えば、

“having”
“composed of”

などがそのような表現に該当します。”having”は明細書に書かれている内容によっては制限語句と非制限語句のどちらにも解釈される可能性があります。また、”composed of”は、制限語句(consisting of)と中間的な表現(consisting essentially of)の中間的な解釈がなされるようです。

以上、様々な表現を紹介してきましたが、訳出がはっきり決められない場合は、とりあえず一番広い非制限語句を使って訳しておく方が安全です。必要があれば、後から制限語句を使って権利範囲を狭めることは容易だからです(その逆は困難)。以上、特許翻訳において何らかの助けになれば幸いです。

参考文献:倉増一、特許翻訳の基礎と応用―高品質の英文明細書にするために―、講談社、2006年

アーカイブ