米国の無効審判の最初の関門
2016.01.26
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日本では、無効審判を請求すると、その請求内容がどれだけくだらないものであっても、形式的な要件が整っていれば、審判官の合議体による審理が行われて、審決が出されます。一方、USPTOでの無効審判に相当する制度では、何れも、審理を開始するための要件が設けられており、この要件を充足しない場合には、実質的な審理に入る前に請求が却下されてしまいます。例えば再審査請求では、既に検討済みの文献に基づく請求は原則として却下されてしまいますので、そのような文献に基づく請求を行う場合は、以前の解釈とは異なる解釈を提示する必要があります。
(a)査定系再審査:請求人は関与しない。文献に基づく新規性・進歩性欠如の無効のみ。記載不備は対象外。有効性の推定なし
費用:100~200万円程度。ほとんど関われない。
開始要件:特許性についての実質的に新たな疑問(substantial new question of patentability)が提起されていること
再審査が請求されると,USPTO の長官は,「特許性の実質的に新たな疑問」(substantial new question of patentability)が存在するかどうかを判断し,存在する場合には再審査の開始を決定し,特許権者に通知する。ある統計によると再審査請求の 95%が許可されている。USPTO が過去に考慮した先行技術に基づく再審査請求は許可されないのが通常であるが,同一の先行技術の異なる解釈に基づく再審査請求が許可される場合もある。また,ある先行技術がUSPTO で考慮されていても二次的な引例として考慮されていた場合には,同一の先行技術に基づく再審査請求が許可される場合もある。ある先行技術に基づく特許の有効性が裁判所で過去に争われたという事実は,「特許性の実質的に新たな疑問」があるかどうかの決定には影響しない
(b)当事者系レビュー:日本の無効審判に相当。文献に基づく新規性・進歩性欠如の無効のみ。記載不備は対象外。有効性の推定なし
費用:2000~3000万円程度。ほぼ訴訟。
開始要件:請求が認められる合理的可能性(reasonably likelihood)があること
(c)異議申立:特許付与後9ヶ月以内。全ての無効理由。有効性の推定なし。
費用:2000~3000万円程度。当事者系レビューとほぼおなじ。
開始要件:無効なる可能性が50%以上であるか、未決着の法律問題があること
“(a) THRESHOLD.–The Director may not authorize a post-grant review to be instituted unless the Director determines that the information presented in the petition filed under section 321, if such information is not rebutted, would demonstrate that it is more likely than not that at least 1 of the claims challenged in the petition is unpatentable.
“(b) ADDITIONAL GROUNDS.–The determination required under subsection (a) may also be satisfied by a showing that the petition raises a novel or unsettled legal question that is important to other patents or patent applications.