ブログ

「からなる」の解釈

2018.10.03

伊藤 寛之

化学系の明細書では、「A成分とB成分からなる組成物。」という表現が請求項が記載されることがあります。
「からなる」が、以下の(a)~(c)の何れを表しているのかがはっきりとせず、争いになりやすい表現です。
(a)A成分とB成分のみを含む
(b)A成分とB成分を含む
(c)主成分としてA成分とB成分のみを含む

(a)の表現は限定しすぎな気がして気が進まず、
(b)の表現は、A成分とB成分が1%しか含まれていない場合も含まれるので、却って記載不備を招く気がして気が進ます、
(c)の表現は、「主成分」が不明確と言われる気がして気が進まない、
結果として、「からなる」という表現でごまかすのだと思います。

これについて、知財高裁は、以下の判決において、「からなる」の意味は、明細書や審査経過によって決まる、と判断しています。
つまり、(a)~(c)の何れにもなりうるということです。

なので、明細書に他の成分の含有を認める記載があれば、過度な限定にはなりませんが、分かりにくいので避けるのが好ましいと思います。

無難なのは、上記(b)の表現にしておいて、明細書に、組成物全体に対して成分(a)と(b)の合計は、〇〇質量%以上であるといった表現を含めておくことだと思います。


知財高裁大合議判決
平成29年1月20日判決言渡
平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件(原審:東京地方裁判所平成27年(ワ)第12414号)

(3) 技術的範囲の属否について
一審被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかについても判断する。
本件発明の特許請求の範囲の記載の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」との構成要件Cは,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であるのか,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等の成分が含まれる場合も包含されるのかについて,特許請求の範囲の記載自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,構成要件Cについては,本件明細書の記載及び出願の経過を参酌して判断する。