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面接審査のススメ

2013.12.18

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日本では(大部分の外国でも)、審査官と面接して、技術内容等の説明を行うことができます。
審査官との面接は、適切な範囲で権利を取得するために非常に有効な手段であると考えられています。
1.面接審査の目的
面接審査の目的は、色々とあります。
1-1.審査官に技術内容を理解してもらう
これが面接審査の主目的です。明細書は、発明の製法及び用途が審査官に理解可能に記載されているものですので、
明細書に記載されている内容を説明しても意味がありません。重要なのは、「発明の意義付け」を説明することです。
当業者にとっては極めて重要な発明の効果が書面を見ただけでは、ピンとこない場合は少なくありません。
例えば、エチレンの重合触媒で収率が1%上げることが極めて難しく、1%上げることが劇的な効果を生じさせるような事情があったとしても、明細書では、実施例と比較例の収率の差が1%しかなければ、その発明の効果は大したことがないと審査官が理解するかも知れません。そのような場合に、事業の背景を説明することによって、審査官が発明の効果を理解しやすくなります。
1-2.審査官を理解する・審査官といい関係を築く
狭い分野の出願を多く出している出願人の場合、複数の案件を同じ審査官が担当することは少なくありません。審査官は、当然、ある程度のくせを持っているので、審査官を理解することはより良い権利取得に繋がります。
また、面接審査において審査官と良好な関係を築くことも重要だと思います。審査官はもちろん好き嫌いで審査をすることはありませんが、審査官も人間である以上、潜在的に微妙な影響を及ぼす可能性が皆無であるとは言い切れないからです。
1-3.出願人の特許への理解を深める
出願人は、「審査」というイメージをはっきりと持っていない場合があります。このような場合、面接審査に同行してもらうことによって、どのような人がどのような考えで審査を行っているのかが理解でき、「審査」への理解が深まります。より良い権利取得には、出願人の協力が不可欠ですので、出願人が「審査」への理解を深めることは、より良い取得に繋がります。
1-4.審査官に会社を知ってもらう
これは完全に私の推測ですが、審査官は、経済産業省に所属する公務員であり、経済産業省の存在意義は日本の産業を発展させることです。審査官は、日本の出願人と外国の出願人を平等に扱う必要はありますが、日本の出願人を応援したいという気持ちを潜在的に持っています。色々と厳しい事業環境の中、少しでも競争力を発揮するために頑張っている点を説明すると、審査官が応援したい気持ちが少しは高まるような気がします。
余談ですが、実際は、外国の出願人は、拒絶理由通知に対する応答期限について3ヶ月の延長が認められるのに対して、日本の出願人は、実験の必要性が有る等の条件付きで1ヶ月のみです。また、明細書の記載についても、直訳調の変な日本語でも外内出願の場合は、記載不備になりにくいのに対して、同じレベルの日本語で日本の出願人が出願すると記載不備になりやすいということもある場合があります。日本の審査は、どちらかというと外国の出願人に有利な面があります。
2.面接審査に適した案件
面接審査は、出願人の考えをゴリ押しするためのものではなく、審査官のコミュニケーションを円滑にして権利化をスムーズに進めるためのものです。そのため、面接審査において、ゴリ押しっぽい雰囲気になってしまうのは良くないので、面接審査は、ある程度、引例との差異がある程度はっきりとしているが、落とし所を決めにくいという案件について行うことが適切です。差異が明確なものは面接審査を行うまでもなく、差異がほとんどないものは、面接審査でごり押しっぽくなってしまうからです。今後も同じ審査官が審査を行うという点を考えると、いい関係を築きやすい案件で面接審査を行うことが重要です。
3.遠方の場合
出願人が遠方の場合は、特許庁まで来るのに時間と費用がかかってしまいます。その分だけ面接審査は行いにくいですが、その一方で、遠方から来た出願人に対して、審査官は、邪険にはしにくいので、その観点から、遠方から来ることには別のメリットがあるとも言えます。

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