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特許の先使用権・意匠の先使用権

2013.11.26

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特許の先使用権の範囲について、ウォーキングビーム式加熱炉事件では、以下のように判示されています。
「実施又は準備をしている発明の範囲」とは、特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり、
このため、出願後に設計変更があって商品の形状が変わっても、その形状変更後の商品に対しては、先使用権によって権利行使が妨げられる可能性があります。
一方、意匠についての先使用権は、裁判例の蓄積は多くありませんが、以下の頁に記載されている判決では、意匠出願の際に実施していた 意匠又はそれに類似する意匠に及ぶとされています。
http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/200110news.html
大阪地方裁判所平成12年9月12日判決
先使用権の効力は,意匠登録出願の際に先使用権者が現に実施をしていた具 体的意匠だけではなく,それに類似する意匠にも及ぶと解するのが相当である。なぜなら,意匠の創作的価値は,当該具 体的意匠のみならずそれと類似する意匠にも及び,意匠権者は登録意匠のみならずそれと類似する意匠も実施をする権利を専有する(意匠法23 条)という制度の下において,先使用権制度の趣旨が,主として意匠権者と先使用権者との公平を図ることにあることに照らせば,意匠登録出願の 際に先使用権者が現に実施をしていた具体的意匠以外に変更することを一切認めないのは,先使用権者にとって酷であって,相当ではないからであ る。被告旧製品の意匠と現在の被告製品の意匠については相違があるが,意匠全体の美観に影響を及ぼすものとはいえない。したがって,現在の被 告製品の意匠は,被告旧製品の意匠の類似範囲に属するというべきであるから,被告は,現在の被告製品の意匠について,先使用権を有するという べきである。

このように、意匠の先使用権の範囲は形状の類似性をベースに定められます。
そうすると、形状変更後の商品について、特許の先使用権が及ぶとしても、意匠の先使用権が及ばない場合も出てきます。
このように考えますと、競争が激しくて、先使用権が成立する場面が多い分野では、特許と意匠の両方で権利化をしておくと、競合の先使用権による抗弁を防ぐことができる可能性が増すので有効です。