意匠の参考図に基づく分割出願が認められなかった事件
2010.11.30
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◆平成18年(行ケ)第10136号審決取消請求事件
★意匠の参考図に基づく分割出願が認められなかった。
(4) 原告は,「参考図」も意匠登録出願の図面の一部であり,原出願の「一組
の図面」及び「必要な図」に一つの意匠が表現され,その原出願の「参考
図」に別の意匠が表現されている以上,原出願は,意匠法10条の2第1項
にいう「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」に当たるというべきであり,
そのように解しても何の障害あるいは不都合もない旨主張する。
しかし,参考図が,「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」か否かの判
断の対象となるものではないことは,上記のとおりである。
そして,上記(3)のとおり,本願意匠は,原出願の参考図に示されていた
ものであるが,参考図において,仮に,意匠登録を受けようとする意匠以外
の意匠が示されたとしても,それは飽くまで意匠登録を受けようとする意匠
の理解を助ける目的で,当該意匠とは別の,意匠登録を受けようとしない意
匠として示されているものであり,その意匠は,必ずしも,意匠登録を受け
ようとする意匠のように所定の様式に従って厳密に記載された図面によって
示されているものではなく,意匠登録を受けるため,意匠に係る物品を明ら
かにしているわけでもないから,この意匠を意匠制度の下で保護することが
予定されているということはできない。
また,様式の制限や意匠に係る物品欄の記載に掲げられた物品と関係がな
く,単なる参考のために記載された図面中の意匠について,出願日遡及効
(意匠法10条の2第2項)を有する分割出願を認めることは,意匠登録を
受けようとする意匠について,意匠に係る物品を明らかにして,所定の図面
により意匠を示して出願した場合に,一定の要件の下に登録して排他的,独
占的な保護を与えるという意匠制度の趣旨に反するものであるだけでなく,
不当に出願日遡及効が認められる範囲を広げ,第三者及び公益を不当に害す
るものとなる。
したがって,このような意匠制度の趣旨等に照らすと,意匠登録出願の願
書の図面において意匠登録を受けようとしない何らかの意匠が示されていて
も,当該意匠登録を受けようとしない意匠について,分割出願を認め,もと
の出願時までの遡及効を認めることは許されないところであって,意匠法1
0条の2第1項の「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」にいう「意匠」
は,参考図等において意匠登録を受けようとしない意匠として示された意匠
を含まず,もとの出願において意匠登録を受けようとする意匠のみを意味す
ると解するのが相当である。