「肌ケアビタミン」(指定商品:薬剤)は識別力なし
2012.09.18
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1 本願商標
本願商標は、「肌ケアビタミン」の文字を標準文字で表してなり、第5類「薬剤」を指定商品として、平成22年2月23日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成文字の並び(文字列)から『肌をケアするビタミン』といった意味が自然に生じ、指定商品との関係では『肌あれ、にきびなど、肌のトラブルの諸症状を改善するためのビタミン剤』ほどの意味合いを直観させる『肌ケアビタミン』の文字よりなるものであるから、これをその指定商品中『ビタミン剤』に使用しても、その商品の品質、効能を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ
当審において、職権に基づく証拠調べをした結果、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当すべきものとする新たな証拠を発見したので、請求人に対し、平成23年12月26日付け証拠調べ通知書によって別掲の内容を開示し、意見を求めた。
4 証拠調べに対する請求人の意見の要点
「肌ケア」の語は、辞書に掲載されておらず、日本語「肌」と英語「ケア(care)」の各語から生じる意味合いをつなげた結果、「肌の手入れ」ほどの意味合いが漠然と想起されるものであり、一般に使用されているとまでは考えにくく、「肌の手入れ」の意味合いを生じる語としては、「スキンケア」の語が成語として一般に使用されている。
また、各種ビタミンが肌の諸症状の改善に効果的に作用するものであり、肌の諸症状の改善を効能とする「ビタミン」を主成分とする薬剤が複数存在している事実については、異論はないが、そのような事実が、本願商標「肌ケアビタミン」についての自他商品識別力の直接の裏付けとなるものではない。
さらに、本願商標は、「肌」、「ケア」及び「ビタミン」の各語が強固に結合した一連一体のものであり、構成文字全体をもって特定の意味を有しない一種の造語として認識されるものであるから、その指定商品との関係において、商品の品質を直接的かつ具体的に表しているとまではいい難く、自他商品識別機能を具備するものである。
5 当審の判断
本願商標は、「肌ケアビタミン」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「肌ケア」の語は、別掲の1に示すとおり、肌あれ、にきびなど肌の諸症状の改善といった「肌の手入れ」ほどの意味合いで用いられている語であり、同じく、「ビタミン」の語は、「生命の維持に不可欠な有機化合物の総称」(「朝日現代用語『知恵蔵』2007」、朝日新聞社発行)を意味するものである。
また、別掲の2に示すとおり、「ビタミン」は、肌の諸症状を改善する働きがあるものであり、同3に示すとおり、肌の諸症状を改善するといった効能がある「ビタミン」を主成分とする薬剤が一般に製造、販売されている。
してみれば、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成全体から容易に「肌あれ、にきびなど、肌の諸症状を改善するためのビタミン剤」ほどの意味合いを看取、把握し、商品の品質を表示してなるものと認識するにとどまるというのが相当であるから、本願商標をその指定商品中、上記意味合いに照応する商品に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
なお、請求人は、本願商標の構成中の「肌ケア」の語が辞書に掲載されておらず、「肌の手入れ」の意味を表す語としては一般的ではない旨述べるとともに、「肌」、「ケア」又は「ビタミン」の各語と他の語とを結合してなる商標が多数登録されていることからすれば、本願商標も登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願された商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、該商標の構成態様と指定商品との関係において、個別具体的に判断されるものであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものであるところ、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、その構成全体をもって、商品の品質を表示してなるものと認識されるにとどまるものであることは、先の認定、判断のとおりである。
また、請求人の挙げた登録例は、いずれも本願商標とはその商標の構成又は指定商品が相違し、本願とは事案を異にするものといわざるを得ないものであるから、それら登録例の存在によって、本願商標についてした前記判断は何ら左右されないというべきである。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。