【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 世界で初めて地球の大きさを測定し エラトステネス(ヘレニズム時代のエジプトで活躍した素数の判定方法である「エラトステネスの篩(ふるい)」で有名なギリシャ人の天才学者)
2025.07.04
AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。地球の大きさは、直径にして12,756 km、外周の距離はおよそ4万kmということがわかっています。地球をはじめとした天体についての研究は、遠い昔に始まりました。古代ギリシャ時代、現在の地球球体説が登場し、数々の研究によって地球は平面ではなく球体状であることがわかりました。この時代に、地球の大きさの研究も始まりました。世界で初めて地球の大きさを測定したのが、ヘレニズム時代のエジプトで活躍したギリシャ人の学者エラトステネスです。彼は素数の判定方法である「エラトステネスの篩(ふるい)」に名を残しました。今回はそんなエラトステネスの生涯を振り返っていきましょう。
エラトステネスの天文学の業績(垂直に立てた棒の影にできた影の角度から地球の大きさを計算する)
エラトステネスは、現在のリビアにあるキュレネで生まれました。 アレクサンドリアやアテネで教育を受け、数学や哲学を学びました。
紀元前255年ごろ、彼は初の天球儀を作成しました。このころにはすでに地球が球体であるとする考え方が生まれており、地理情報の研究が進められていました。エラトステネスは地球の大きさを図るため、経緯度を用いて地図を作成しようとしました。彼は紀元前236年にプトレマイオス3世の勅命を受け、ロドスのアポローニオスに代わってアレクサンドリア図書館の館長に就任していたため、多くの情報を集めることができたのです。それまでの研究史を頼りに、当時完成していた世界地図を改良し、ロドスを基準として緯線と経線を引いた地図を作りました。
古代ギリシアでは、北極星が見える高さは場所によって異なるとされていました。このため紀元前4世紀ごろにはすでに地球が球体であり、宇宙に存在するその他の星々も球状をしているという説が唱えられていました。また太陽光は場所にかかわらず平行に降り注いでいるということも、この時代に唱えられていました。これらの条件をもとに、エラトステネスは、図書館にこもって地図を作るための勉強を日々重ねていきました。
ある夏の日、シエネの町にある井戸を覗き込んだ時、太陽の光が底まで届いていることに気がつきました。その日は夏至であり、もっとも日が長いとされる日でした。太陽の高さは自分たちの真上にあることから、南中高度が 90度となることに気がついたのです。緯度と経度がわかれば、地球の大きさを割り出すことができます。彼はアレクサンドリアに戻り、日光と棒を使って実験を行いました。垂直に立てた棒にできた影の角度は、シエネとアレクサンドリアの緯度の差であると考えたのです。この結果、シエネとアレクサンドリアとの距離は地球の大円(地球の表面上に書き表せる最大の円)の50分の1の大きさに相当することを確かめました。
エラトステネスが発見した地球の大きさを現在の単位に直すことは難しいとされています。当時使用されていた大きさの単位は時代や地域によって異なるため、正確な値が求められないのです。いずれにしても地球が球体であり、太陽光は平行に地球に降りかかるというエラトステネスの仮説は正しいものでした。その後天体の研究が進んでいくと、より正確な値が算出されましたが、エラトステネスが割り出したものとほぼ同じ値が出てきました。
エラトステネスの数学の業績(素数の判定方法である「エラトステネスの篩(ふるい)」を考案する)
エラトステネスはまた、数学の世界においても大きな功績を残しました。指定された範囲の中にある素数をすべて見つけるためのアルゴリズムである「エラトステネスの篩(ふるい)」を考案したのです。用意した数表の中で、合成数をひとつずつ消していくと素数が一覧が浮かび上がるという方法です。
現在において、素数を見つけることにはさまざまな目的があります。暗号理論に用いるためのものだったり、数の構造を理解するためだったり、あるいは数学的な研究のため、純粋に素数を研究するために求めたりなどです。古代に登場した素数判別の手法は、研究に応用されることはもちろん、数遊びの方法としても利用されています。
今回は、世界で初めて地球の大きさを改名したエラトステネスの生涯を振り返りました。長く続く人類史において、地球や天体の研究はロマンあるテーマだったに違いありません。身近な道具を用いて、緯度と経度から地球の大きさを算出した頭の良さには舌を巻きます。彼が残した篩を使って、数学の世界で新たな発見がなされることも期待したいですね。