【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #14 スタートアップが確認しておきたい知財のポイント・手続きを解説
2025.07.03
SKIP
スタートアップが確認しておきたい知財のポイント・手続きを解説
起業を目指す方、すでにスタートアップを立ち上げたばかりの方にとって、「知的財産(知財)」は意外と後回しにされがちなテーマです。しかし、知財の保護や確認は、実はビジネスのごく初期段階から欠かせない重要事項です。今回は、スタートアップが最低限押さえておきたい知財のポイントと手続きについてわかりやすく解説します。
スタートアップと知財が密接に関わる理由
知財権は「早い者勝ち」の側面があります。たとえば、ビジネスをスタートしてから社名や商品名が他社の商標権と重複していたことが判明すると、名称の変更を余儀なくされ、顧客や投資家の信頼を失うリスクがあります。
また、特許や意匠の権利が他社に先に取得されていた場合、事業そのものの継続が難しくなるケースも少なくありません。
そのため、ビジネスの準備段階から知財について最低限の確認を行っておくことが、後の大きなリスク回避につながります。
社名や商品名を決める前に商標の確認を
会社名や商品名は、まず他社が既に商標登録していないかを確認する必要があります。調査は日本特許庁が提供する「J-PlatPat」という無料の検索システムを活用できます。
確認すべき商標には以下が含まれます。
●会社名
●商品・サービス名
●サービスロゴ
●その他、ブランドを示す名称・マーク
同じ商品・サービス区分で他社に既に商標登録されていた場合、そのまま使用すると商標権侵害となり、訴訟や使用差し止めのリスクがあります。最悪の場合、ビジネス名称の変更を余儀なくされることもあります。
商標登録をおすすめする理由
仮にまだ登録されていなければ、自社で商標登録を行うのがおすすめです。商標登録により以下のメリットが得られます。
●他社による無断使用を防止できる
●自社ブランドとして安心して使用し続けられる
●投資家や取引先からの信用度が向上する
競合の知財状況も必ず確認しよう
競合他社がすでに保有している特許権・意匠権を侵害してしまうと、警告や訴訟のリスクがあります。特に、自社の製品・サービスの中核技術やデザイン部分が他社の権利範囲に抵触していないかは要注意です。
J-PlatPatでは、他社の特許や意匠も簡易検索が可能です。
競合他社の特許や意匠を調査することは、単に侵害リスクを回避するだけでなく、自社の事業戦略を検討するうえでも大きなメリットがあります。知財情報を積極的に活用することで、次のような効果が期待できます。
●自社の強みや差別化ポイントを把握できる
●競合が手を出していない領域を発見できる
●提携候補となるライセンス先企業を見つけられる
自社技術・デザインは特許権・意匠権で守る
スタートアップにとって、自社の技術やデザインは貴重な経営資源です。これらをしっかりと特許権・意匠権として権利化することで、将来の成長を支える有力な武器となります。特許・意匠を取得することで、次のようなメリットが得られます。
●模倣を防止し、競合との差別化が可能
●ライセンス収入や提携交渉の材料になる
●技術力・ブランド力の裏付けとして信用を得られる
出願時の注意点
特許や意匠を出願する際には、いくつか重要なポイントを事前に確認しておく必要があります。これらを怠ると、せっかくの技術やデザインが権利として認められなくなる可能性があります。
●出願前に論文・展示会等で公表すると新規性が失われる
●ビジネスモデルに適した権利範囲で出願内容を吟味する
●ブラックボックス化や早期公開など、戦略的選択肢も検討する
スタートアップは知財戦略も初期投資と考えよう
知財戦略は「事業が軌道に乗ってから考えればよい」と後回しにされがちですが、スタートアップこそ立ち上げ初期から積極的に取り組むべき重要な投資項目です。たとえば、商品名やロゴを他社に先に商標登録されてしまえば、後から名称変更を余儀なくされ、ブランドイメージの損失や顧客の混乱を招く可能性があります。
また、特許や意匠についても、事業の中核となる技術を早期に権利化しておかなければ、競合他社に模倣されるリスクが高まります。
知財の出願や調査には一定の費用や手間が発生しますが、万一の紛争リスクを未然に防ぎ、投資家や提携先からの信頼を得る大きな材料にもなります。
将来の資金調達やM&Aの際も、知財ポートフォリオの有無が大きな評価ポイントとなるため、スタートアップ段階から計画的に取り組んでおくことが、結果的に安定した事業成長を支える土台となります。
まとめ
スタートアップにとって知財は、製品やサービスの保護だけでなく、事業の信頼性や今後の成長戦略にも直結する重要な要素です。社名や商品名の商標調査、競合他社の特許・意匠の確認、自社技術の権利化など、早期に知財戦略へ取り組むことが、後々のリスク回避と事業拡大の安定性につながります。
とはいえ、知財に関する手続きや調査には専門的な知識が必要になる場面も少なくありません。
SK弁理士法人では、スタートアップの皆様の知財戦略を総合的にサポートしています。商標・特許・意匠の取得支援から、事業フェーズに合わせたアドバイスまで幅広く対応可能です。ぜひお気軽にご相談ください。