【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #9 不正競争の防止(不正競争防止法)とは?目的や知的財産権との関係、不正行為の類型まで解説
2025.05.25

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不正競争の防止(不正競争防止法)とは?目的や知的財産権との関係、不正行為の類型まで解説
現代のビジネス社会において、企業同士が健全に競い合う「公正な競争環境」の整備は、経済の発展に不可欠な基盤です。こうした競争秩序を守るために設けられているのが「不正競争防止法」です。本記事では、不正競争防止法の目的や知的財産法との関係、具体的な不正行為の類型についてわかりやすく解説します。
不正競争防止法の目的
不正競争防止法(平成5年法律第47号)は、「事業者間の公正な競争」と「国際約束の的確な実施」の確保を目的としています。結果、「国民経済の健全な発展に寄与すること」を最終的な目的としています。
この法律は、企業が安心して技術やブランドを活用できるように、営業上の利益を守る「私益」の側面と、公平な競争環境を維持する「公益」の側面を兼ね備えています。
また、パリ条約やTRIPS協定、商標法条約などの国際的な約束を日本国内で適切に実施するための法的な枠組みとしても機能しています。
不正競争防止法では、民事的な差止請求や損害賠償に加えて、特定の行為に対して刑事罰も規定しており、違反者に対して強い抑止効果を持たせる構成となっています。
知的財産法の一環としての不正競争防止法
不正競争防止法は、知的財産法の一部と位置づけられています。特許法や商標法などが「権利を付与して保護する(権利制度)」のに対し、不正競争防止法は「不正な行為を禁止する(行為規制)」という特徴があります。
例えば、「周知な商標に似た表示を使って混同を招く行為」などは、特許権や商標権がなくても、一定の条件を満たせば不正競争として保護されます。
このように、不正競争防止法は既存の権利制度を補完する役割を果たしており、実務上も非常に重要な法律です。
不正競争に該当する主な行為類型
不正競争防止法では、さまざまな不正競争行為が規定されていますが、以下の5つは特に産業財産権と密接に関係する重要な類型です。
周知な商品等表示の混同惹起行為(第2条第1項第1号)
他人の商品名やロゴマークなど、消費者に広く知られた表示(商号・商標など)を使って、自社商品と他社商品を混同させる行為です。
表示が全国的でなくても、一部地域で認知されていれば保護の対象になります。
実際に混同が起きていなくても、「混同のおそれ」があれば違法とされ、故意の場合は刑事罰の対象となります。
著名な商品等表示の冒用行為(第2条第1項第2号)
全国的に著名なブランド表示を、混同がなくても勝手に使う行為です。たとえば、「マリオカート」や「ピーターラビット」など、著名なブランドやキャラクターの名前を自社の商標や広告に使うと違法となります。
これは混同の有無にかかわらず禁止されており、信頼や名声を不当に利用する行為として、特に強く規制されています。
他人の商品形態の模倣品の提供行為(第2条第1項第3号)
他人の商品とそっくりな形態の商品を販売する行為です。形状や色、模様、外観だけでなく、構造や内装も含まれます。
ただし、「ありふれた形」や「機能上必要な形態」は保護の対象外です。さらに、模倣から3年以上が経過した商品、または模倣品であることを知らずに扱った場合は、民事・刑事罰の対象外とされます。
営業秘密の侵害行為(第2条第1項第4号〜)
企業が管理する設計図やノウハウ、顧客リストなどの営業秘密を、窃盗や詐欺で取得・使用・開示する行為です。
保護されるには、以下3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 秘密として管理されていること(アクセス制限、マル秘表示など)
- 事業にとって有用な情報であること(脱税情報などは除外)
- 公然と知られていないこと(学会で発表したものなどは対象外)
これらの情報を不正に扱う行為には、民事・刑事の責任が問われます。
限定提供データの不正取得等(第2条第1項第10号〜)
近年追加された概念で、データベース時代に対応した規定です。
「限定提供データ」とは、特定の相手に業として提供され、電磁的に蓄積・管理されている営業・技術情報のことを指します。
たとえば、IDとパスワードで保護された会員制データベースの情報が該当します。このようなデータを不正に取得・利用・開示した場合も不正競争に該当し、法的責任が発生します。
不正競争防止法は企業の信用と競争力を守る要
不正競争防止法は、企業のブランドや技術、営業情報を不正な模倣や流用から守るための重要な法律です。特許や商標といった登録制度とは異なり、「不正な行為」を直接取り締まる仕組みであるため、形式的な登録がない場合でも、企業の大切な知的財産を保護できる柔軟な特徴があります。
不正競争防止法の適用可否は、法的な要件や過去の裁判例に照らした慎重な判断が必要です。また、他人の権利を侵害しないようにするためにも、事前のリスク管理が欠かせません。
不正競争防止法に関してお悩みの企業様や、トラブルを抱えている方は、ぜひSK弁理士法人までご相談ください。


