【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #5 意匠制度とは?目的・登録の要件について解説
2025.04.08
SKIP
意匠制度とは?目的・登録の要件について解説
デザインの魅力は、単なる装飾を超えて製品やサービスの価値を大きく左右します。意匠登録は、そのような創造的なデザインを法的に保護し、模倣から守るための制度です。
しかし、意匠として認められるにはいくつかの条件を満たす必要があり、「美しければ登録できる」という単純なものではありません。
本記事では、意匠法における「意匠」の定義から、登録に必要な要件、新規性や創作性といった重要なポイントまでをわかりやすく解説します。
意匠制度とは
意匠制度は、製品や建築物、画像などの見た目のデザイン=「意匠」を法律によって保護し、創作者の権利を守るための仕組みです。
目的は、優れたデザインの創作を保護し、それを社会に広く活用させることで産業の発展を促進する点にあります。
私たちの身の回りにある製品や建築物、インターフェースのデザインは、ただ機能的であるだけでなく、見た目の印象や使いやすさも重要な要素となっています。
こうしたデザインは、模倣が容易であるがゆえに、創作者の努力が他者によって簡単に奪われてしまうおそれがあります。そのため、オリジナルの意匠に正当な権利を与えることで創作意欲を守り、結果としてデザインの質を高め、競争力ある産業の形成へとつなげることが求められているのです。
意匠登録を受ける方法
意匠登録を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
意匠の登録要件
意匠登録を希望しても、すべての出願が自動的に認められるわけではありません。審査の過程では、出願された意匠が法律で定められた登録要件をすべて満たしているかどうかが細かくチェックされ、基準に合致したものだけが登録の対象となります。
意匠の登録要件について詳しく見ていきましょう。
法上の「意匠」であること
意匠登録を受けるためには、まず出願されるデザインが、法律上「意匠」として認められるものでなければなりません。意匠法では、「意匠」とは視覚に訴える創作であることが前提とされており、見た目の美しさや印象によって美感を与える要素を含んでいる必要があります。
その対象となるのは、たとえば工業製品や日用品などの「物品」における形状・模様・色彩、あるいはそれらの組み合わせです。加えて、住宅や店舗といった「建築物」の外観デザインも意匠として保護されます。
さらに、現代ではスマートフォンや家電製品の操作画面、システムのUIといった「画像」も、一定の条件を満たせば意匠の対象として認められるようになりました。
画像に関しては、機器の操作に供されるものや、機能の結果として表示されるものであることが求められます。
工業上利用できるものであること
意匠登録を受けるには、「工業上利用性」を満たす必要があります。
「工業上利用できるものであること」は、そのデザインが実際に製品として複数生産できる、将来的に工業的利用が見込まれることです。
現実に利用されているか否かは問われませんが、少なくとも再現性や製造可能性があることが必要です。
工業上利用できるものであるためには、さまざまな要件を満たす必要があります。
まずは、「意匠として成立していること」です。ここでいう意匠とは、物品・建築物・画像のいずれかに該当するもので、その構成が明確であることが求められます。
たとえば、物品は市場で流通する有体物に限られ、建築物は土地に定着した人工構造物であること、画像であれば操作画像か表示画像でなければなりません。
さらに、「具体性」も登録においては重要なポイントです。出願書類や添付図面から、意匠の使用目的や利用状況、形状の構成などが明確に読み取れる状態でなければなりません。曖昧な説明や不完全な図面では、審査官に正しく意匠が伝わらず、登録が認められないおそれがあります。
「新規性」と「創作性」
意匠登録を受けるには、「新規性」と「創作性」を満たす必要があります。
「新規性」とは、出願しようとする意匠が、出願時点で国内外のどこでも公に知られていない、つまり全く新しいものであることを意味します。
過去に公報や書籍、雑誌、カタログ、インターネットなどを通じて公にされたもの、またはそれと類似しているものは「新規性がない」とみなされ、登録は認められません。
たとえ創作者自身による公開であっても、それが出願前であれば原則として新規性は失われてしまいます。ただし、例外もあり、自らの公開であれば、公開日から1年以内に出願し、かつ出願後30日以内に「自己の公開である」ことを証明すれば、新規性を保持したものとして取り扱われます。
次に「創作性」とは、その意匠が単なる模倣や一般的な発想にとどまらず、創作者の独自の工夫が認められるものであることを意味します。たとえば、その分野の専門知識を持つ人であれば誰でも思いつくようなデザインは、創作性が乏しいと判断され、登録対象とはなりません。これは、誰でも容易に考えつくようなデザインに独占的な権利を与えてしまうと、新たな創作を妨げる結果につながるからです。
まとめ
意匠登録は、製品の見た目の工夫を法的に保護し、競争力あるビジネスを築くうえで大きな力となる制度です。ただし、そのためには意匠法が定める要件をクリアしなければなりません。デザインが新規であること、創作性を備えていること、工業的に利用可能であることなど、審査のポイントは多岐にわたります。少しでも不安がある方は、早い段階から専門家に相談するのが賢明です。
SK弁理士法人では、意匠登録に関する豊富な実績と専門知識をもとに、出願から権利取得まで丁寧にサポートいたします。大切なデザインを正しく守るために、ぜひ一度ご相談ください。