【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®法解説 Claim #4 実用新案制度とは?目的・保護対象・特許制度との違いを解説
2025.04.01
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実用新案制度とは?目的・保護対象・特許制度との違いを解説
実用新案制度は、特許制度と並ぶ知的財産権の1つで、物品の形状や構造、組み合わせに関する工夫(考案)を迅速かつ手軽に保護するための制度です。特許制度では保護が難しい日常生活や産業で役立つ小規模な改良やアイデアを対象としており、無審査で権利を取得できる点が特徴です。
本記事では、実用新案制度の目的や保護対象、特許制度との違いについて詳しく解説します。
実用新案制度の目的とは
実用新案制度の目的は、物品の形状、構造、または組み合わせに関する工夫(考案)を保護し、その利用を促進することで産業の発展に寄与することにあります。
特許制度では画期的な技術や方法を保護する一方、実用新案制度は日常生活や産業上で役立つ小規模な改良や工夫を対象としており、いわゆる「小発明」を保護するために設けられました。
平成6年の改正により、形式的な要件を満たしていれば実体的な審査を行わずに権利を付与する「無審査主義」が採用され、権利化までの期間を短縮することで、迅速に市場での利用が可能となる仕組みが整っています。
さらに、権利濫用を防ぎ、第三者に不測の不利益を与えないために、権利行使にあたっては「実用新案技術評価書」の提示が義務付けられています。特許庁が権利の有効性や技術的評価を行い、権利行使の適正性を判断するための基準となります。
このような制約により、権利濫用が抑制され、公平性が担保されています。また、平成6年以降の改正では、実用新案権の存続期間が延長されるなど、権利者が長期的にその権利を活用できる仕組みも整備されました。
実用新案制度は、特許制度よりも簡易で低コストな手続きが可能であり、中小企業や個人発明者にとって非常に有用です。特に、具体的な物品の改良や日常生活の便益を高める技術に適しており、スピーディーに権利化を進めることで、産業や社会全体に広く貢献しています。
特許と実用新案を適切に使い分けることで、発明や考案の内容に応じた柔軟な知的財産戦略を構築することが求められます。
実用新案制度の保護対象
実用新案制度の保護対象は、実用新案法に基づき、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり、産業上利用可能な「物品の形状、構造、または組み合わせに係る考案」に限定されています。
ここでいう「考案」とは、物品の具体的な形状や構造、またはそれらの組み合わせに関する工夫を指します。この定義に基づき、実用新案制度では特定の物品の技術的特徴を重視して保護の対象を定めています。
ただし、「物品の形状、構造、または組み合わせ」に該当しないものは保護の対象外となります。具体例として以下が挙げられます。
- 方法に関する考案……製造工程や手法に関する技術など
- 組成物の考案……化学物質や混合物に関連する工夫など
- 化学物質そのもの……特定の分子構造や化学合成技術など
- 一定の形状を有しないもの……液体や粉末状の物質(例:液体バラスト、滑り止め粒)など
- 動植物品種……新たに開発された植物や動物の品種など
- コンピュータプログラムそのもの……プログラム自体は実用新案の保護対象にはならないが、プログラムを組み込んだ具体的な装置やシステムは保護対象となる可能性がある
このように、実用新案制度は物品に焦点を当てた制度であり、特許制度のように広範囲な技術や方法を保護するものではありません。
実用新案制度と特許制度の違い
実用新案制度と特許制度の違いは、下記のとおりです。
項目 | 特許 | 実用新案 |
保護対象 | 物、方法、物を生産する方法の発明 | 物品の考案に限定 |
実体審査 | 審査官が審査 | 無審査 |
権利の存続期間 | 出願から20年 | 出願から10年 |
権利化にかかるコスト | 高い | 安い |
権利行使 | いつでも裁判所で権利行使できる | 技術評価書の提示および警告後でなければ権利行使ができない |
出願件数 | 年間約30万件 | 年間約5千件以下 |
特許と実用新案は、どちらも知的財産権における重要な制度ですが、保護対象や手続き、権利行使などに大きな違いがあります。専門家に相談のうえ、どちらを利用すべきかを決めて活用することが大切です。
まとめ
実用新案制度は、物品の形状や構造、組み合わせに関する工夫を迅速に保護するために設けられた制度です。特許制度とは異なり、無審査主義を採用し、コストや手続きの簡便さが特徴で、中小企業や個人発明者に適しています。
ただし、保護対象が物品に限定されることや、権利行使には技術評価書の提示が必要など、特有の制約があります。発明の内容や目的に応じて、特許と実用新案を適切に使い分けることで、効果的な知財戦略を構築することが可能です。
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