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タイヤの販売で、車の特許が消尽するかどうかの考察

2012.08.04

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ここでのコメントで記載した内容です。
「感覚的には、これを許すと二重取りになる、と思われてならず」というのがこの論点の答えであると思います。
常識的にそのように感じる状況が二重利得である判断されるはずです。
例えば、ブリジストンの特許が以下の3つの請求項を有するとします。、
【請求項1】〇〇という特性を持ったゴムからなるタイヤ。
【請求項2】〇〇という特性を持ったゴムからなるタイヤを備えた車。
【請求項3】〇〇という特性を持ったゴムからなるタイヤと、このタイヤの凹凸を読み取って回転数制御を行うエンジンを備えた車。
ブリジストンがタイヤをトヨタに販売し、そのタイヤをつけた車をトヨタが消費者に販売するとします。
ブリジストンが「タイヤをつけた車」に対して権利行使できるかどうかが論点になりますが、タイヤを車に取り付けて販売することは、タイヤの販売時点で分かっていることなので、請求項2に基づく権利行使は二重利得になるでしょう。
一方、請求項3のようにタイヤ以外に特徴がある場合には、判断が微妙になります。色々な状況を勘案して、二重利得と判断される状況もそうでない状況もあり得るでしょう。タイヤの販売によって、車についての請求項について一律に消尽が生じないとするのも、一律に消尽が生じるとするのも、不合理だからです。
一律に消尽が生じるとしてしまうと、タイヤ以外の要素に大きな工夫を加えた車の特許が、タイヤの販売によって権利行使不能になるのは特許権者にあまりに酷であるのに対し、タイヤ以外の要素に工夫がない車の特許の権利行使を認めるのは二重利得そのものだからです。
従って、タイヤの販売によって、車の特許が消尽するかどうかは、タイヤの販売の形態(売買するものの関係、契約の内容など)と特許の内容に従って、決定されるべきことだと思います。

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