日本の意匠審査における拒絶理由通知(オフィスアクション:OA)に対しては、応答期間の延長が可能です。
国内居住者等(在内者)は審査段階では合理的理由なしに2ヶ月の延長が認められ、期間を経過した後でも一定の条件下で延長請求が可能です。
一方、審判段階(拒絶査定不服審判)では在内者に延長手段が一切なく、特許以上に厳格な期限管理が求められます。
本記事では、在内者を対象として、意匠の拒絶理由通知の応答期間延長に関する現行運用を、審査段階と審判段階に分けて整理し、特許・商標との比較も行います。
- 審査段階の応答期限:
在内者は1回の延長請求で2ヶ月延長(理由不要・手数料2,100円)
期間経過後も2ヶ月以内なら延長請求可能(手数料7,200円)
ただし期間内延長と期間経過後延長の併用は不可 - 審判段階の応答期限:
在内者は延長手段が一切なし - 拒絶査定不服審判の請求期間(3ヶ月)は延長できない
1. 拒絶理由通知の応答期間(基本情報)
特許庁から発送された拒絶理由通知を受領した場合、出願人は所定の期間内に意見書や手続補正書を提出して応答する必要があります。この応答期間は、出願人が在内者であるか在外者であるかによって異なります。
| 段階 | 在内者 | 在外者 |
|---|---|---|
| 審査段階の拒絶理由通知 | 40日 | 3ヶ月 |
| 審判段階の拒絶理由通知 | 40日 | 3ヶ月 |
表1:意匠の拒絶理由通知の応答期間(当初指定期間)
次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(…)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、(…)意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
意匠の当初応答期間は商標と同じ40日であり、特許(60日)と比べ20日短い点に注意が必要です。
国際意匠登録出願(ハーグ出願)の特例
国際意匠登録出願(ハーグ制度経由)の拒絶の通報に対する応答期間は、通常の意匠出願とは異なり60日と設定されています(方式審査便覧04.10の1.(12))。
| 国内出願 | ハーグ出願 | |
|---|---|---|
| 在内者 | 40日(交通不便地55日) | 60日(交通不便地75日) |
| 在外者 | 3ヶ月 | 3ヶ月 |
表2:国内出願 vs ハーグ出願の応答期間
本記事では以下、主に国内出願の在内者を対象に説明しますが、ハーグ出願の場合も延長の仕組みは同じです(当初期間が60日に置き換わるだけ)。
2. 審査段階における応答期間の延長
+
2ヶ月
+
2ヶ月
審査段階の拒絶理由通知については、在内者であっても合理的理由なしに応答期間の延長が認められています。以下、期間満了前の延長と、期間経過後の延長に分けて整理します。
期間満了前の延長請求
応答期間の満了前に期間延長請求書を提出することで、1回(1通)の請求で2ヶ月の延長が認められます。
- 延長可能期間:2ヶ月(1回の請求で)
- 合理的理由:不要
- 手数料:2,100円(1通)
- 請求回数:1回のみ
在内者の場合、延長請求に合理的理由は不要であり、期間延長請求書を提出するだけで2ヶ月の延長が認められます。この点は特許(同じく2ヶ月)と同様です。
次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法(…)の手続の指定期間については、指定期間内(…)の請求により、2月延長することができる。
ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)
期間経過後の延長請求
現行運用では、応答期間の経過後であっても延長請求が可能です。万が一応答期限を徒過してしまった場合にも、一定の条件下で救済されます。
- 延長請求可能な期間:応答期間の末日の翌日から2ヶ月以内
- 延長される期間:応答期間の末日の翌日から2ヶ月
- 合理的理由:不要
- 手数料:7,200円
- 請求回数:1回のみ
意匠の期間経過後の延長手数料は7,200円です。特許の51,000円と比べれば大幅に低額ですが、商標(4,200円)よりは高い設定です。
応答期間経過後2か月間、請求可能。請求は1回のみ。請求理由は問われない。
ただし、当初の応答期間内に期間延長請求を行った場合、または意見書を提出した場合は、請求不可。
期間経過後の延長請求ができない場合
以下の場合には期間経過後の延長請求ができません。
- 当初の応答期間内に期間延長請求(期間内延長)を行った場合
- 当初の応答期間内に意見書を提出した場合
1点目は期間内延長との併用が不可であることを意味します。これは特許と同じルールであり、商標(併用可能)とは異なります。
2点目の制限事由について、意匠では「意見書」のみが制限事由です。特許では「意見書又は補正書」の提出が制限事由ですが、意匠では補正書への言及がありません。応答期間内に意見書を提出せずに手続補正書のみを提出した場合は、応答期間経過後の延長請求が可能です。(特許庁に確認済み)
指定期間の延長について、国内居住者及び在外者は指定期間経過前の請求により2月、指定期間経過後の請求により2月延長できる。指定期間経過前に延長請求した場合には、指定期間徒過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出したときは、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
3. 延長パターンの比較(在内者・審査段階)
意匠は期間内延長と期間経過後延長の併用が不可のため、選択できるのは実質2パターンです。いずれのパターンでも最長応答期間は同じ40日+2ヶ月です。
| パターンA 期間内延長のみ |
パターンB 期間経過後延長のみ |
|
|---|---|---|
| 当初応答期間 | 40日 | 40日 |
| 期間内延長 | +2ヶ月 | ─ |
| 期間経過後延長 | ─ | +2ヶ月 |
| 最長応答期間 | 40日+2ヶ月 | 40日+2ヶ月 |
| 手数料 | 2,100円 | 7,200円 |
| 合理的理由 | 不要 | 不要 |
| 条件 | ─ | 期間内に延長請求・意見書いずれも未提出 |
表3:延長パターン別比較(在内者・審査段階)
パターンBの期間経過後延長はパターンAと同じ延長幅ながら手数料が3倍以上です。実務上は、計画的にパターンAを利用し、パターンBは万が一のセーフティネットとして位置づけるのが望ましいといえます。
4. 審判段階における応答期間の延長
拒絶査定不服審判請求後に拒絶理由通知を受けた場合、意匠の在内者には延長手段が一切ありません。これは商標と同じであり、特許(在内者でも合理的理由があれば最大1ヶ月延長可能)よりも厳格です。
- 期間満了前の延長:不可
- 期間経過後の延長:不可
- ※(参考)在外者:最大1ヶ月の延長可
意匠では在内者に延長手段がないため、審判段階の拒絶理由通知は特許以上に厳格な期限管理が必要です。
(参考)拒絶査定不服審判の請求期間は延長不可
→
延長不可
拒絶査定を受けた場合の拒絶査定不服審判の請求期間(3ヶ月)については延長ができません(審判便覧25-04)。意匠の拒絶査定不服審判の請求期間は法定期間であり、在外者であっても職権による延長はされません。この点、特許出願の在外者に対しては1ヶ月の延長が認められている(請求期間が計4ヶ月となる)のとは異なります。
ただし、その責めに帰することができない理由により期間内に手続ができなかった場合には、救済規定(意§46②)が設けられています。
意匠出願及び商標出願の拒絶査定不服審判の請求期間(意§46①、商§44①)…は職権による延長はしないが、その責めに帰することができない理由による期間徒過後の救済規定(…意§46②…)が設けられている。
5. 審査段階 vs 審判段階 比較まとめ(在内者)
意匠の拒絶理由通知の応答期間延長について、審査段階と審判段階の違いを一覧にすると以下の通りです。
| 審査段階 | 審判段階 (拒絶査定不服審判後) |
|
|---|---|---|
| 当初の応答期間 | 40日(ハーグ出願60日) | 40日 |
| 期間満了前の延長 | 2ヶ月(1回) | 不可 |
| 合理的理由 | 不要 | ─ |
| 期間経過後の延長 | 可(2ヶ月) | 不可 |
| 期間内+経過後の併用 | 不可 | ─ |
| 手数料(満了前) | 2,100円 | ─ |
| 手数料(経過後) | 7,200円 | ─ |
| 最長応答期間 | 40日+2ヶ月 | 40日のみ |
表4:在内者の応答期間延長 審査段階 vs 審判段階(意匠)
審査段階では2ヶ月の延長が認められるのに対し、審判段階では一切の延長ができない点が最大の違いです。拒絶査定不服審判を請求した後に拒絶理由通知を受けた場合は、当初の40日以内に必ず応答を完了させる必要があります。
6. よくあるご質問(FAQ)
※本記事の内容は、記事作成時点の情報および法令に基づいています。正確な情報の提供に努めておりますが、内容の完全性・正確性を保証するものではなく、本記事の内容に関して生じた損害等について一切の責任を負いません。個別の事案については必ず弁理士等の専門家にご相談の上、手続きを進めていただくよう強く推奨いたします。


