【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 自動運転システムの発明家 青木俊介(自動運転のシステムをEV車に搭載すべく研究を続けているチューリング株式会社の共同創業者)
2025.09.22

AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。近年、人間が操作を行わなくても運転操作を自動で行ってくれる自動車が開発されています。人間の集中力や注意力には限界があるため、どうしても事故が起こってしまいます。完全自動運転が実用化されれば、車が危険を感知して回避行動を取ってくれるので、事故発生率を下げられる可能性があります。チューリング株式会社は、そんな自動運転のシステムをEV車に搭載すべく研究を続けています。2021年に創業されたばかりの同社には、業界の内外から大きな注目が集まっています。青木俊介は、そんなチューリング株式会社の共同創業者の1人です。今回はそんな青木俊介の生涯を振り返っていきましょう。
青木俊介の起業前(カーネギーメロン大学とGMで自動運転システムの開発を行う)
青木俊介は1989年、神奈川県川崎市で生まれました。2014年3月、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了すると、その後はアメリカのカーネギーメロン大学に留学して、2020年に博士号を取得しました。
自動運転技術は1920年代ごろから始まりましたがなかなか実用化されませんでした。1980年代、カーネギーメロン大学とドイツのダイムラー・ベンツがそれぞれある程度自律走行可能な自動車を開発しましたが実用化までは至りませんでした。自動運転を実現するために、さまざまな課題に対する解決策が求められていました。自動運転車は事前に走行ルートをシステムに記憶させる必要がある関係上、事故による車線の制限や工事などで道路の形状が変わった場合の対応は大きな課題でした。アメリカではこうした場合の対策として、自動運転車自身が交通信号機となる「サイバー信号機」のシステムを考案しました。青木はカーネギーメロン大学での研究で、無線通信を使うことでサイバー信号機を実現しました。
その後はゼネラルモーターズ社(GM)で、「ウルトラクルーズ」という運転支援システムの開発に携わりました。GMは2017年、一部の高速道路上でハンズフリーの自動運転ができる「スーパークルーズ」システムを開発していました。ウルトラクルーズはこの進化系ともいえるシステムで、約320万キロメートル以上もの道路がルートとして登録されています。
2017年、プログラマーの山本一成が作成した将棋ソフト「Ponanza」が第2期電王戦で佐藤天彦名人(当時)に勝利し、AIの実力が注目されるようになりました。山本は次のステップとして自動車産業に参入しようとするものの、ソフトウェア開発を専門とする自分にはハードウェア開発の知識がなく、悩んでいました。そんな時、青木と山本が出会いました。
青木俊介の起業後(将棋ソフト「Ponanza」の発明者の山本一成と一緒にチューリング株式会社を共同創業する)
青木、山本は意気投合し、共同で事業を立ち上げることにしました。そして2021年、完全自動運転が可能なEV車を開発するチューリング株式会社が創設されました。2022年10月12日、AIによる自動運転の技術を向上させるための走行実験を行いました。北海道をAIによる自動運転で一周するというもので、1300km以上の距離を無事に走り切ったことでAIの安全性を実証しました。
2023年2月、最初の自動運転車を1台限定で販売。その後東京アールアンドデーと提携し、自社初の車両生産拠点「Turing Kashiwa Nova Factory」を千葉県柏市に新設し、2025年中に製造・販売を予定する自動運転EV100台の生産拠点を確保しました。
自動車開発のほか、同社では生成AIの開発なども手がけています。ハードウェアを青木が、ソフトウェアを山本が担当することで、それぞれの専門性を生かした活動ができ、スタートアップながら高い技術力が注目を浴びています。
青木は技術者でありながら、教育にも力を入れています。CTOとして自動運転システムの開発を主導する立場にあり、また教育者としても「突き抜けた能力を持つ人材」の発掘に注力しています。
今回は、チューリング株式会社の共同設立者の1人青木俊介の生涯を振り返りました。完全自動運転が実現されれば、悲惨な死亡事故を減らすことができるかもしれません。さらに運転手の負担が減ることで、より自動車業界が盛り上がっていくことでしょう。チューリング社の今後も活躍には期待が高まりますね。


