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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー ボス・レスピレーターを発明した エドワード・トーマス・ボス(数多くの医療機器の発明をして大活躍した優秀な発明家)

IP HACK

2025.03.31

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。1937年、オーストラリアではポリオが猛威を振るっていました。ポリオに感染すると、頭痛や首のこわばり、感覚異常などの症状が現れます。通常これらの症状は1〜2週間ほどで治りますが、まれに後遺症が残って手足や首が永久的に麻痺状態となってしまうことや、ひどい場合には死に至ることも。そんな中、「ボス・レスピレーター」と呼ばれる人工呼吸器が発明されました。このマスクは「鉄の肺」と呼ばれ、ポリオの治療に大きな効果をもたらしました。感染拡大は収束し、市民は平穏な暮らしを取り戻したのです。ボス・レスピレーターを発明したのは、オーストラリアの発明家エドワード・トーマス・ボスです。彼は「オーストラリアのエジソン」とも呼ばれ、医療や軍事などさまざまな領域で発明を行いました。今回はそんなエドワード・トーマス・ボスの生涯を振り返っていきましょう。

エドワード・トーマス・ボスの前半生(心電計を発明してビジネスで成功し、ポリオ患者のためにボス・レスピレーターを発明する)

エドワード・トーマス・ボスは1908年、南オーストラリア州カルトウィーで生まれました。ボスは長男で、彼のほかに4人のきょうだいがいました。地元のカルトウィー公立高校とジェームズタウン高校に通い、優秀な成績を収めました。16歳のとき、ボスはアデレード大学の物理学部で勉強し始めます。そこで教授のカー・グラントと出会い、のちに個人秘書として雇われることに。ボスはグラントのもとで働き、発明家としてさまざまな経験を積んでいきました。

1932年、ボスは心電計を開発。グラントはこの発明を見て感動し、ボスのために医療機器の製造・設計を行うための施設を創設しました。ボスは南オーストラリアの医療業界で名のしれた人物となり、製造された心電計は心臓の診断に活用されました。弟のドナルドもボスに協力し、心電計の製造を受け付ける仕事をして4年間を過ごしました。唯一の市販品でありながら、常に安定した品質を保ち続けたボスの心電計は業界において不動の地位を確立しました。

ボスが心電計を発明した時期と時を同じくして、オーストラリアではポリオが流行し始めていました。ポリオは世界的な流行病でもあり、アメリカでもパンデミックが発生していました。そこで、「鉄の肺」と呼ばれる人工呼吸器が発明されました。鉄の肺は陰圧換気型で、装着した人の吐息が外部に漏れないようにできる仕組みです。そのためポリオの感染拡大防止に大きな期待を寄せられていましたが、非常に高価だったため必要な人に行き渡らないという問題がありました。

この状況を打開するため、医療機関では代替品を開発する動きが起こっていました。アメリカでは各地のエンジニアや木工職人が手を組み、木製で安価な鉄の肺が生産されました。1398年、イギリスで心電計を販売していたボスはこの話を聞き、合板で鉄の肺を製造するというアイデアを実現しました。この人工呼吸器はボスの名前をとり「ボス・レスピレーター」と名付けられました。軽量であり、安価で販売できたため、大量に生産され、ポリオに苦しむ多くの人の助けとなりました。この人工呼吸器は2003年ごろまで使用され続けました。

エドワード・トーマス・ボスの後半生(数多くの医療機器の発明をして大活躍する)

第二次世界大戦の時期、ボスは軍の依頼を受けて軍需の発明を行いました。特に電子マイクロメータと電子クラック検出器は、銃身の点検を行うのに有効活用されました。さらに誘導魚雷や軍用の医療機器の開発などにも携わりました。

戦後、ボスはシドニーに拠点を移します。ここでは、新生児用インキュベーターや輸血用機器、脳波計などを発明しました。そのほか、業界を問わずボスはさまざまな分野で活躍しました。1952年、デビスカップと1956年のメルボルンでの夏季オリンピックでは電気スコアボードを発明。オリンピックのスコアボードは10,000個の電球で構成されており、アルファベットのすべての文字と数字を表示できます。スコアボードとともに、2つのバージョンのペンレコーダーが開発および製造されました。1つはウーメラで武器研究用に使用され、もう1つは南極研究、 CSIRO 、大学、病院、医療および産業研究用にも使われました。

1987年、ボスはビクトリアのマウントビューティーで最期の時を迎えました。

今回はオーストラリアで数多くの発明をしてきたエドワード・トーマス・ボスの生涯を振り返りました。彼が発明した「ボス・レスピレーター」は、ポリオの収束に大活躍しました。ボスはそのほか、第二次世界大戦での軍需発明、その後の医療機器開発などで大きな功績を残しました。医療も知識や技術がアップデートされてきたことで、現在では質の高い治療を受けられます。この進化の歴史を作ってきた発明家に感謝の気持ちを持ちたいものですね。

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