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インドの実務は悩ましい

2015.03.21

伊藤 寛之

弊所では最近インド出願の取り扱い件数が増えてきました。
インドの実務は、色々な面で特徴的です。
1.First OAから12ヶ月以内に特許査定にしなければならない
主要国では、「OAの発行日から所定期間」という形式で応答期限が設定されますが、
インドでは、First OAから特許査定までに期限が決まっています。
First OAへの応答の後に、どれくらいの期間で審査官のレスポンスがあるのかは審査官によって
決まってしまいますので、対応が非常に悩ましいです。
出願人側の取りうる方策としてはできるだけ早く応答することしかありません。
2.各国のStatus変化を随時特許庁に伝えなければならない
 インドでは、ファミリー出願の詳細情報(detailed particulars)を随時(from time to time)通知する義務が条文(Section 8(1)(b))に規定されています。この義務に違反すると、長官は、特許を取り消すことができます。
このような極めて重要な規定ですが、何が詳細情報なのか、随時とはどれくらいの期間なのかは明確に定められていません。判例上も現在のところ明確ではありません。現地代理人に相談すると、最も安全側に立って、出願、公開、OA発行、それに対する応答、取下、特許査定、登録などありとあらゆる変化を6ヶ月毎に通知すべきであると言ってきます。これは、最も安全側に立って意見であって、ここまでが必要であるとの根拠は全くありません。
実際に、Phillipsケースでは、2年間毎に詳細情報の通知を行っていましたが、その点を裁判所は、全く問題とせず、さらに、詳細情報の一部が欠落していたにも関わらず、それが故意ではなく、重要な情報でもなかったことを理由にして、特許が取り消されないと判断しています。また、この判決以外にも、詳細情報の通知間隔が6ヶ月を超えたことを理由に取り消しになった事案は、これまで一例もないようです。
 このような状況を考えると、通知間隔をもっと長くしたり、OA発行があった場合にのみ通知を行ったりするなどが考えられますが、どのようにするのがベストなのかは、条文・判例からは直ちに導くことができないのが悩ましいところです。
3.優先権証明書の翻訳文が求められる
 インドでは、かなり多くのケースにおいて、優先権証明書の翻訳文が求められます。PCTの規則上、審査に必要な場合にのみ求めることができるはずですが、インド人には、そんな理屈は通用しません。求められれば提出せざるを得ません。
4.主要国の審査結果が求められる
 インドでは、全ての主要国(all major countries)の審査結果及び許可クレームの提出が求められます。問題なのは、「主要国」が何を含むのかが明確でないことです。一般には、US、EP、JPは、少なくとも含み、KR,CNも含むかもと考えられていますが、はっきりしたことが分からないので、結局、全ての国の審査結果を提出せざるを得ません。結構、面倒です。

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