ブログ

欧州のセルフコリジョン（self-collision）は、EPC５４条（３）において、以下のように規定されています。
日本の２９条の２と同じような規定ですが、出願人同一・発明者同一の場合での適用されるので、注意が必要です。
EPC Article 54
(1) An invention shall be considered to be new if it does not form part of the state of the art.
(2) The state of the art shall be held to comprise everything made available to the public by means of a written or oral description, by use, or in any other way, before the date of filing of the European patent application.
(3) Additionally, the content of European patent applications as filed, the dates of filing of which are prior to the date referred to in paragraph 2 and which were published on or after that date, shall be considered as comprised in the state of the art.
本願の出願日と同日又は本願の出願後に公開された他の出願の開示内容は、先行技術となる。

先後願の判断基準については、審査便覧で以下のように規定されています。
EPO – Guidelines for Examination in the European Patent Office
(2014/11/1から構成が大幅に変わっています。変更後は、特許性に関する規定はPartGに掲載されています。)
Part G 5.1.1 Requirements
Whether a published European application can be a conflicting application under Art. 54(3) is determined firstly by its filing date and the date of its publication; the former must be before the filing or valid priority date of the application under examination, the latter must be on or after that date. If the published European application claims priority, the priority date replaces the filing date (Art. 89) for that subject-matter in the application which corresponds to the priority application. If a priority claim was abandoned or otherwise lost with effect from a date prior to publication, the filing date and not the priority date is relevant, irrespective of whether or not the priority claim might have conferred a valid priority right.
（日本語訳、JETROのページから転載）
5.1.1 要件
公開された欧州出願が第54条(3)に基づく抵触出願であり得るか否かは，最初にその出願日及びその公開日によって決定される。出願日については，審査中の出願の出願日前又は有効な優先日前でなければならず，公開日については，同日以後でなければならない。公開された欧州出願が優先権を主張する場合は，優先日は，優先出願に対応する出願中の主題について出願日(第89条)に代わるものとなる。優先権主張が放棄された場合，又は公開に先立つ日付から失効した場合は，優先権主張に対して有効な優先権が付与されたか否かを問わず，優先日ではなく出願日が関係する。

---

上記規定によると、先後願は、本願と他の出願の優先日同士で比較されます。従って、２つの出願の欧州出願日（PCTの場合はPCT出願日）が同じであっても、日本出願日が異なっている場合には、セルフコリジョンの規定が適用されることになります。
セルフコリジョンを防ぐための１つの方法は、２つの日本出願を併合して、１つの欧州出願にするという方法があります。この場合、「他の出願」が存在しないことになりますので、セルフコリジョンは発生しえないことになります。
但し、単一性違反によって分割出願が必要になった場合、親出願と分割出願の間でもセルフコリジョンの問題が発生する場合がありますので、注意が必要です。EPO 審決(T1496/11)
セルフコリジョンを防ぐためには、（１）関連出願はなるべく同日に出願すること、（２）将来権利化する可能性があるが現時点ではクレームアップしない発明については明細書には記載しないことが重要だと思います。