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【最高裁判決】上告審で初めてなされた訂正の再抗弁は認められない。

2017.07.24

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地裁・高裁での審理において、無効の抗弁がなされました。通常であれば、これに対して、訂正審判の請求を行った上で、「訂正の再抗弁」を行います。しかし、本件では、別件の審決取消訴訟が係属しているために、訂正審判・訂正請求を行うことができませんでした。
最高裁の判断は、「そんなの関係ねぇー。訂正請求しなくても、訂正の再抗弁をやったらいいじゃん。」です。
最高裁の言い分も分かりますが、特許権者もかわいそうな気がします。


平成28年(受)第632号 特許権侵害差止等請求事件
平成29年7月10日 第二小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/898/086898_hanrei.pdf

そして,特許権侵害訴訟の終局判決の確定前であっても,特許権者が,事実審の
口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず,その後に訂
正審決等の確定を理由として事実審の判断を争うことを許すことは,終局判決に対
する再審の訴えにおいて訂正審決等が確定したことを主張することを認める場合と
同様に,事実審における審理及び判断を全てやり直すことを認めるに等しいといえ
る。
そうすると,特許権者が,事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張し
なかったにもかかわらず,その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判
断を争うことは,訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえ
るだけの特段の事情がない限り,特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させ
るものとして,特許法104条の3及び104条の4の各規定の趣旨に照らして許
されないものというべきである。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,原審の
口頭弁論終結時までに,原審において主張された本件無効の抗弁に対する訂正の再
抗弁を主張しなかったものである。そして,上告人は,その時までに,本件無効の
抗弁に係る無効理由を解消するための訂正についての訂正審判の請求又は訂正の請
求をすることが法律上できなかったものである。しかしながら,それが,原審で新
たに主張された本件無効の抗弁に係る無効理由とは別の無効理由に係る別件審決に
対する審決取消訴訟が既に係属中であることから別件審決が確定していなかったた
めであるなどの前記1(5)の事情の下では,本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁
を主張するために現にこれらの請求をしている必要はないというべきであるから,
これをもって,上告人が原審において本件無効の抗弁に対する訂正の再抗弁を主張
することができなかったとはいえず,その他上告人において訂正の再抗弁を主張し
なかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情はうかがわれない。
4 以上によれば,原判決には所論の違法はなく,論旨は採用することができな
い。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

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