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化学物質発明の引例適格性について述べた判決

2010.12.03

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◆平成13年(行ケ)第547号 特許取消決定取消請求事件
★化学物質発明の引例適格性について
「(2) 本件発明4が刊行物発明1と同一であるとして特許法29条1項3号によ
り特許を受けることができないとされるためには,刊行物発明1が発明として完成
していること,すなわち,刊行物1(甲3)の明細書に,その技術内容が,当業者
が反復実施して目的とする効果を挙げることができる程度にまで具体的,客観的に
記載されていることを要し,上記刊行物の頒布時(公開特許公報の公開日である平
成元年1月20日)における技術常識を参酌し,明細書の記載によって判断される
べきものである。」
「一般に,発明の完成に要求される上記反復実施の可能性は,科学的に再現することが
当業者において可能であれば足り,その確率が高いものであることを要しないと解
すべきであって(最高裁平成12年2月29日第三小法廷判決・民集54巻2号7
09頁参照),化学物質発明の最適な実施の態様として明細書に記載されている具
体例(実施例等)について,それを追試する場合には,明細書中で与えられている
実験条件と,そこに記載されていないが当業者が技術常識に照らし通常考え得る範
囲の実験条件を適宜組み合わせて,十分な試行錯誤を行い,いずれの場合にも所期
の結果が得られないときには,明細書に,当業者が反復実施して目的とする効果を
挙げることができる程度にまで具体的,客観的に記載されていないということがで
きる」

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