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補正が新規事項になるかどうかの基準

2010.07.21

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拒絶理由通知を受けたときは、補正を行わずに反論が可能である場合を除いて、クレームを減縮して拒絶理由を解消することを試みます。
クレームの補正は、法律では、明細書等に記載された事項の範囲内でできる、と特許法17条の2第3項に記載されています。
「記載された事項の範囲内」とは、曖昧な文言ですので、特許庁は、時代によってその解釈を変えています。
平成15年より前は、「当初明細書等の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項」であるかどうかが基準でした。この運用は、非常に厳しくて明細書に書いてある文言そのもの以外の補正を行うことは恐怖でした。
特許庁では非常に厳しいのに対して、裁判所の運用はもう少し緩やかで、明細書の記載から自明なものは、新規事項の追加に該当しないという判例がいくつか出ました。
その判例を受けて、特許庁は審査基準を改正して、「当初明細書等の記載から自明な事項」については、新規事項の追加にならないことにしました。
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/meisai_t_zu_kijyun.htm
この改正によって審査基準上はあまり変化は見られませんでしたが、実務上は、補正がかなりやりやすくなったと言われています。
また、2008年に知財高裁の大合議(全ての部の部長全員が相談して決めるとても権威のある合議体)で、補正の基準は、「新たな技術的事項を導入」するかどうかで決められるべきであると判断しました。
特許庁は、いわゆる除くクレームは、例外的に補正が認められるという運用を行って来ましたが、裁判所は、除くクレームは、新たな技術的事項を導入しない場合、例外的ではなく当然に補正が認められるとして特許庁実務を否定しました。
特許庁は、この判決を受けて、今年の6月に審査基準を変更しました。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/meisaisyo_shinsa_kaitei.htm

解説では、従来実務を変更しないと書いていますが、やはり表現が変わると、審査官の心証に与える影響は大きいと思います。自明であるとは言えないけど、新たな技術的事項を導入するとはいえないという事案があった場合には、従来よりも、補正が認められやすくなると思います。

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