情報提供制度(ライバル企業の特許取得を未然防止)
2010.07.13
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ライバル企業に特許を取得されると困る場合は、情報提供制度を利用して刊行物を提出することが非常に有効です。
特許庁:情報提供制度について
http://www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/tt1210-037_sanko2.htm
この制度自体は、以前からありましたが、以前は異議申立制度といって、特許されてから6ヶ月間の間であれば、「ちょっとまったー」といって特許すべきかどうかの再度審査を求める制度がありました。この制度は、実質的に匿名で請求できて非常に便利でしたが、無効審判と併合するという理由で廃止されました。
異議申立と無効審判は、似て非なる制度です。異議申立は匿名でできたのに対し、無効審判は匿名で行うことが非常に難しい仕組みになっています。異議申立件数は、年間3000件程度で、無効審判は年間200件程度でしたが、異議廃止後、無効審判件数がほとんど変化しませんでした。やはり実名を曝して他人の権利をつぶしに行くのは色々な問題があってためらうのでしょう。
異議申立制度に取って変わったのが、情報提供制度です。情報提供制度は、
(1)匿名で行えること、
(2)特許になる前に審査官に情報を与えるので、審査官の心象に与える影響が大きいこと、
(3)自由な形式で記載できるので、比較的短時間で書面が作成できること(代理人費用が安いこと)
がメリットに挙げられます。
情報提供は、タイミングが重要です。審査請求がなされる前に情報提供を行うと、出願人にその出願が重要であると気づかせてしまいます。従って、情報提供は、審査請求がされた後に提出するといいです。審査請求されてから実際に審査に着手するのに2年程度かかるので、審査請求後であっても全く問題ありません。
情報提供では、可能であれば、業界紙などの業界の者しか知らない情報を提供するのがいいでしょう。審査官は、特許文献の調査のプロですので、特許文献については、情報提供をしなくても審査官が見つけてくれます。審査官が見つけられない文献を提供するのが最も効果的な情報提供と言えるでしょう。
情報提供の理由としては、
第17条の2第3号(新規事項追加)
第29条第1項柱書(非発明又は産業上利用可能性の欠如)
第29条第1項(新規性欠如)
第29条第2項(進歩性欠如)
第29条の2(拡大先願)
第39条第1号~第4号(先願)
第36条第4項第1号(明細書の記載要件違反)
第36条第6項第1号~第3号(特許請求の範囲の記載要件違反)
第36条の2第2項(原文新規事項追加)
が挙げられています。単一性違反などを除いて、ほとんど全ての拒絶理由について情報提供が可能であることが分かります。