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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー 水車を発明した ビザンチウムのフィロン(古代ギリシア・ローマ時代に「Mechanike syntaxis (総覧の力学)」という書籍を執筆して水車を発明していた天才学者)

じっくりヒストリー IP HACK

2025.07.14

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。古代ギリシアでは、人間の心や数学、天文学など、自分の身の回りの物事、現象に関係する学問の研究が進められてきました。物質の状態や性質、数の原理などは現代においても重要な基礎知識とされています。そんな中、便利な道具の発明もこの時代には盛んに行われてきました。水の力を動力としてエネルギーを生み出す水車は、紀元前2世紀ごろに発明されたとされています。紀元前3世紀ごろの古代ギリシアの書物には、水車に関係する記述が登場します。この書物を著したのは、ビザンチウムのフィロンです。彼は発明家、著作家として活動しました。今回はそんなビザンチウムのフィロンの生涯を振り返っていきましょう。

フィロンの著作(「Mechanike syntaxis (総覧の力学)」を執筆する)

フィロンの出没年は、明らかになっていません。彼はその生涯で、多くの発明と作品を残しました。中でも「Mechanike syntaxis (総覧の力学)」は大作であり、世の中の学問について幅広く書き記しています。この書物には『数学入門』『一般機械学』『港湾建築』『砲兵』『空気または水圧で作動する装置』『機械玩具および娯楽』『包囲の準備』『秘密文書』というセクションが存在し、学問に加えて軍事的な要素も含まれていました。

フィロンが生存していた時代は紀元前であり、彼について書かれた資料は数少ないものの、近年の研究では彼の書物に水車に関する記述があることがわかりました。ギリシア人による紀元前3世紀半ばの水車の発明が掲載されていたのです。人類史上初めて確認されたのは紀元前紀元前2世紀ごろの小アジアだとされていますが、古代ローマにおいても水車が建設されていたといいます。ただし古代ローマにおける水車は滅多に使われない機械であり、奴隷労働の豊富な古代ローマ社会においては一般に余り普及しなかったとされています。

フィロンの機械工学や数学の業績(チェーンドライブやジンバルを発明し、立方体倍積問題の解法を見出す)

フィロンの功績の一つに、連弩のチェーンドライブの最も古い知られている応用があります。 水平に接続された2つのチェーンと揚錨機(アンカーを巻き上げる機械)がつながり、揚錨機を前後に回すことで機械の矢が自動的に発射されるというものです。

さらにフィロンは、ジンバルについても言及しました。ジンバルとは、軸を中心に物体を回転させる台のことを指します。フィロンはジンバルをもとに8面のインク入れを作り、どの面も上になるように回転させることで利用できるようにしました。回転体の中心には金属リングのインク溜めを取り付けることで、どのように回転させてもインクが流れ出る心配はありませんでした。

そのほか、フィロンの書物では初期に知られている洗面所の一部としての脱進機について説明しています。 水槽とスプーン、そして軽石を使い、水時計の構造を示したものでした。

数学では、フィロンは立方体の体積を倍増させるという問題、立方体倍積問題に取り組みました。 立方体の体積の倍増は、最初のカタパルトの投擲量の2倍を発射することができる第2のカタパルトを構築する問題によって必要とされたのです。 彼の解決策は、直角双曲線と円の交点を見つけることでした。これは、数世紀後にアレクサンドリアのヘロンによって与えられた解決法と同様のものでした。

今回は、書物に重要な記述を残し、現在の発明に多くのヒントを与えたビザンチウムのフィロンの生涯を振り返りました。古代ローマ時代、人間は身の回りの出来事をひとつずつ理解していきました。そのような時代にあり、書物にして後世に情報が残るようにしたフィロンの功績は大きなものです。遠い昔に生きた人々が何を考えて暮らしていたのか、それを考えると実に興味深いですね。

 

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