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【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー たった一人で風車を組み立てて発電を行った ウィリアム・カムクワンバ(14歳のときに手作りで風車を製作し、電気のない村で風力発電を実現したアフリカの天才少年発明家)

じっくりヒストリー IP HACK

2025.05.26

AKI

私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。アフリカ大陸に位置するマラウイという国では、1人の少年が身近にある素材を集めて風車を作ったことが知られています。発展途上国が多くインフラの整備も十分とはいえないアフリカでこのような発明がなされたことは、世界から多くの関心を集めるきっかけとなりました。風車をたった1人で組み立て完成させた少年の名前は、ウィリアム・カムクワンバです。今回はそんなウィリアム・カムクワンバの生涯を振り返っていきましょう。

ウィリアム・カムクワンバの前半生(アフリカの村で中学を中退して農業をしながら独学+独力で風力発電を実現する)

ウィリアム・カムクワンバは1987年、マラウイ中部州ドーワ県マシタラ村で生まれました。農家に生まれたカムクワンバは家族の手伝いをしながら、学業を修めるためにプライマリースクールに通いました。卒業後はセカンダリースクールに進学するものの、2002年の干ばつによって家族の経済状況が悪化し、学費を払えなくなってしまったために退学することになります。セカンダリースクールを中退した後も、カムクワンバは村の図書館に通って独学で勉強を続けました。そんな時に出会った1冊の本が、その後の彼の人生に大きく影響を与えることになるのです。

カムクワンバが手に取ったのは、エネルギーの利用について書かれた本でした。電力を生み出すための仕組みについて記された本で、彼は特に風力発電と水の組み上げに関する部分に興味を惹かれました。当時、マラウイでは国民全体の2%ほどしか電気の供給を受けられていませんでした。カムクワンバはマラウイの実情を変えるため、独力で風力発電のための風車の製作に取り組みました。彼は本を読み、「実際に風車を作った人がいるなら自分にもできないことはない」と考えたのです。

それからは実家の畑を耕しながら風車建築のための素材集めの日々が始まりました。木材や鉄材を購入する資金がなかったため、村の森やゴミ捨て場から必要な素材を探して拾い集めました。カムクワンバの行動は、村の住民からすれば理解しがたいものでした。家族もカムクワンバの奇行を心配し、ついには「彼は頭がおかしくなった」と噂されるまでになってしまいます。中には薬物に手を出したのではないか、呪いをかけられたのではないかなどといった風説も流れ、カムクワンバは村の中で孤立していきました。そのような状況にあっても、カムクワンバが折れることはありませんでした。少年が1人で発電機関を製作するのは危険が伴い、何度か感電したこともあったようです。根気よく作業を続けた結果、ついにカムクワンバの風車は完成の日を迎えました。森から切り出したユーカリの木やゴミ捨て場に捨てられていた自転車や自動車の部品などで製作した高さ5メートルの風車から、接続した自転車用の電球に電力を送ると、電球が灯りました。その場に集まっていた村人たちは目の前の現象に驚愕し、電力を自給できる事実に喜びました。

ウィリアム・カムクワンバの後半生(TEDで注目を浴びて企業の寄付金で中学に進学しアメリカのダートマス大学を卒業する)

最初の風車が完成した後も、ウィリアム・カムクワンバは発明を続けました。次に製作したのは、2006年に完成した高さ12メートルの風車です。より多くの電力を供給するには、より大きな風車が必要でした。2007年には太陽光発電パネルがマラウイに寄付され、カムクワンバは井戸上に貯水タンクと太陽光パネルを設置して給水設備を作りました。2009年までに、彼は5基の風車を製作して村のインフラ向上に役立てました。カムクワンバは村の住民から電気製品の修理や開発などを依頼されるようになっていきました。

カムクワンバの取り組みは、マラウイ最大の都市ブランタイヤの新聞社Daily Timesに取り上げられました。風車製作の記事を新聞に掲載すると、ブログウェブを通じて世界中に拡散されていったのです。カムクワンバが風車を独力で発明した事実は海を越えて、世界から大きな関心と注目を浴びました。アメリカの公演団体であるTEDカンファレンスの責任者エメカ・オカフォーはカムクワンバの話を聞くと、2007年にタンザニアのアルーシャで開催するカンファレンスへの招待のオファーを出しました。カムクワンバはこれに参加して、自身も講演を行いました。カンファレンスに参加していた企業はカムクワンバの行動に感動し、セカンダリースクールへ通学するための学費を支援することを約束しました。さらにウォールストリート・ジャーナルの記者サラ・チルドレスも、彼がより多くの関心を集められるようにカムクワンバの話を世界に拡散していきました。その後、カムクワンバはマラウイの首都リロングウェにあるアフリカン・バイブル・カレッジのクリスチャンアカデミーに進学しましたが、2008年には南アフリカ共和国のヨハネスブルグにあるアフリカリーダーシップアカデミーの奨学生となりました。

2009年、カムクワンバは多くの支援を受け、国内でもエリートが集まる名門大学のアフリカリーダーシップアカデミーに入学しました。2010年からアメリカのダートマス大学に通い、2014年に卒業しました。

カムクワンバと風車の物語は、『風を操った少年』と題して書籍化されました。さらに同タイトルで映画化もされ、カムクワンバは世界的な有名人となったのです。

今回は、独力で風車を製作したウィリアム・カムクワンバの生涯を振り返りました。当時14歳という若さで、誰の助けも借りずに独学で風力発電の機関を作り上げたことは大きな功績です。この素晴らしい発明の原動力となったのは、マラウイの実情への思いです。まだまだアフリカには支援が必要な国が多い現状、いつの日かすべての国民が豊かに暮らせる日が来てほしいものですね。

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