【SKIPの知財教室(IP Hack ®)】じっくり®ヒストリー ウィークボソンを発見した シモン・ファンデルメール(CERNで確立冷却法によりWボソンとZボソンというふたつのウィークボソンを発見してノーベル物理学賞を受賞した天才研究者)
2025.04.21

AKI
私たちの身の回りには非常に多くの画期的なモノや手法であふれています。これらはすべて先人たちのアイデアによって実用化された数多くの発明のおかげです。物質を構成する基本要素である素粒子同士には、4つの相互作用があると言われています。4つの相互作用のうちのひとつ、「弱い相互要素」は、「ウィークボソン」と呼ばれる素粒子によって媒介されています。弱い相互作用によって、ベータ崩壊や水素が生まれるときの核反応などの現象が発生するのです。ウィークボソンを発見したのは、オランダの物理学者シモン・ファンデルメールです。彼は欧州原子核研究機構という研究所で素粒子の実験を行い、ウィークボソンを生成するための「確率冷却法」を確立しました。今回はそんなシモン・ファンデルメールの生涯を振り返っていきましょう。
シモン・ファンデルメールの前半生(フィリップス研究所でエンジニアとして活躍して欧州原子核研究機構(CERN)に参加する)
シモン・ファンデルメールは1925年、オランダのハーグで生まれました。第二次世界大戦の真っ只中で青年期を過ごし、ドイツ占領下のオランダで大学に通いました。1940年にオランダはドイツに降伏し、ナチスの支配のもとで治められていましたが、1945年にドイツは連合国に対して降伏。オランダは解放され、市民は自由な生活を取り戻しました。
終戦後、ファンデルメールはデルフト工科大学に通い、電気技術を学びました。1952年からフィリップス研究所に入り、エンジニアとして腕を磨いていきました。
1954年、スイスとフランスの国境に欧州原子核研究機構(CERN)が設立され、多くの研究者が集められました。ファンデルメールも1956年からメンバーに加わりました。CERNでは加速器を用いた素粒子の研究が行われており、ファンデルメールもこの研究に参加したのです。
シモン・ファンデルメールの後半生(CERNで確立冷却法によりウィークボソンを発見してノーベル物理学賞を受賞する)
シモン・ファンデルメールは、中間子が崩壊してできるニュートリノを効率的に集めるニュートリノホーンや確率冷却法によって反陽子ビームの出力向上を達成しました。反陽子ビームによる実験はさまざまな研究の効率化をもたらし、CERNの活動に大きく貢献しました。
1968年にシェルドン・グラショー、アブドゥッサラーム、スティーヴン・ワインバーグという3人の物理学者たちが、電磁力と弱い相互作用の存在を唱えました。この時点では、ウィークボソンの存在は理論的に説明できる程度のもので、直接確認されているわけではありませんでした。CERNで行われた確立冷却法は、ウィークボソンを発見するために大きな役割を果たしました。1983年、ファンデルメールはついにWボソンとZボソンというふたつのウィークボソンを見つけ出しました。この功績は世界的に讃えられ、「弱い相互作用を媒介する場の素粒子(ウィークボゾン)の発見を導いた巨大プロジェクトへの貢献」として、ファンデルメールに1984年のノーベル物理学賞が贈られました。
CERNでは素粒子の研究のほか、情報技術の研究や研究の啓発活動なども行っています。Webサイトを構成する言語であるHTMLやインターネット通信のための規則であるHTTPなども、CERNで誕生しました。現在においても、CERNはあらゆる技術の研究において重要な施設として知られています。
今回は、ウィークボソンの発見に大きく貢献したシモン・ファンデルメールの生涯を振り返りました。弱い相互作用はベータ崩壊の原因となる現象であり、これが発見されたことで原子力研究が一歩前進しました。物質はすべて素粒子でできており、素粒子がどのような動きをしているのか解き明かすことはエネルギーを生み出す方法を見つけたり、宇宙の謎について研究したりすることにつながります。素粒子について考える機会はそれほど多くないかもしれませんが、たまにはごく小さな世界を覗いてみるのも面白いですよ。



