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許可クレームと許可されていないクレームを両方独立させる補正の注意点

特許

2025.02.26

伊藤 寛之

拒絶理由通知に対する応答で、許可クレームがある場合それを独立させる補正を行うことは多くあると思います。しかし、許可クレームを独立させるだけでなく、許可されなかったクレームに新たな限定を加えて独立させる補正も含めたい場合(または許可されていないクレームをそのまま独立させて反論したい場合)、許可クレームの独立項と許可されていないクレームの独立項の順序に気を付ける必要があります。この記事では、それについて以下の例を用いて説明します。

まず、以下のような請求項に係る発明の出願を想定します。

【請求項1】
装置X。
【請求項2】
請求項1に記載の装置Xであって、要素Aを備える装置X。
【請求項3】
請求項1に記載の装置Xであって、要素Bを備える装置X。

そして、この発明に対する拒絶理由通知において、請求項1は許可されなかったクレームで、請求項2,3は許可クレームであるとします。そこで、補正によって、請求項2,3を独立項としつつ、請求項1に新たな限定(例えば、要素C)を追加してその特許性を主張する場合を考えます。この場合、補正後の新請求項の順序は、以下のような順序であることが大切です。

【請求項1】
装置Xであって、要素Cを備える装置X。
【請求項2】
装置Xであって、要素Aを備える装置X。
【請求項3】
装置Xであって、要素Bを備える装置X。

すなわち、新請求項1には、許可されていないクレームを配置し、新請求項2,3には、順不同で、許可クレームを配置します。この理由は、単一性違反を指摘されにくくするためです。請求項1に許可されていないクレーム(上の例では、旧請求項1+要素C)を配置しておけば、必ず審査対象となり、且つ、新請求項2,3は許可クレームであるので、審査官にとって新たな調査が必要ないため、そのまま許可されることになります。もしも、許可されていないクレームを新請求項2又は3として配置してしまうと、新請求項1との間で単一性違反を指摘され、許可されていないクレームは審査が行われず、発明から除外せざるを得なくなる可能性が高いです。よって、必ず許可されていないクレームをトップクレーム(請求項1)に配置して拒絶理由通知に応答することが大切です。

以上、許可クレームと許可されていないクレームを両方独立させる補正を行う際の注意点を簡単に説明しました。参考になれば幸いです。

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