米国出願では、物のクレームと方法のクレームがはっきりと区別されており、物のクレームにおいて方法のクレームに思えるような文言があると、補正または拒絶の理由となる場合があります。例えば、「~を溶着して形成された○○部」のような表現が、物のクレームにおいて方法のクレームのような書き方をしているケースに該当します。このような表現は、物のクレームに適した書き方に修正したほうが良いです。
具体的には、物のクレームでは、動作を表す動詞(action/dynamic verb)は使わずに、状態を表す動詞(stative/static verb)のみを使うようにします。日本語の物のクレームにおいて、特に多い方法的・動作的な表現として「○○に挿入された」「○○を形成する」がありますが、これらをそのまま”inserted to ○○”, “○○ is formed”などと訳してしまうと、物のクレームに方法のクレームが混ざっていると誤解される可能性があるので、それぞれ、”disposed in ○○”(○○に配置された), “having ○○”(○○を有する)などに変更して、動作ではなく状態を記述していることを明確にします。他にも、動作をあらわす動詞は、状態をあらわす動詞に変換してから翻訳します。これにより、米国出願において、物のクレームとして認定されやすくなります。
以上、米国出願における物のクレームの注意点について短くまとめました。米国では、物と方法のクレームをはっきりと区別することが大切です。
参考文献:倉増一、特許翻訳の基礎と応用―高品質の英文明細書にするために―、講談社、2006年