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USでNotice of Allowance後に外国で新引例が発行された場合の対応

2015.11.06

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米国では、特許の発行まで、IDSの義務が継続します。
このため、Notice of Allowanceが発行されてもIDSの義務はなくらならず、Issue Feeの支払いを行ってもIDSの義務は無くなりません。このため、Notice of Allowance後に外国で新引例が発行されると非常に悩ましい状況に陥ります。
このような場合、以下の対応が考えられます。
①RCEして新引例をIDS提出
 最も正攻法です。この場合、RCEが必要ですので、その費用が必要になります。また、審査官が再考した結果、Notice of Allowanceが発行されないというリスクがあります。つまり、せっかくの特許査定を自ら取り消すという手続きを行った結果、そのままであれば特許になっていたものが特許にならなくなるというリスクがあります。
なお、RCEをして新引例を提出したが、審査が再開されなかった場合は、RCE費用が返還されます。
Quick Path Information Disclosure Statement (QPIDS) | USPTO
②RCEせずに、新引例を提出
この場合、新引例は、包袋に含められますが、審査官によって考慮されません。RCEをするのは費用とリスクがあるために、一応提出する意思があることを示すために、よく採用されている方法です。
③何もしない
この場合、新引例が発行されたことを忘れてしまい、何もしません。
ところで、IDS違反かどうかは、裁判所において、(1)騙す意図、(2)文献の重要性の2つのファクターに基づいて審理されます。そして、これらの基準に基づく総合判断によってIDS違反であると判断されると、権利行使が不能になります。
騙す意図が非常に強ければ文献がさほど重要でなくてもIDS違反となり、騙す意図が弱ければ文献が非常に重要でなければ
IDS違反にならないと解釈されています。
上記の対応①~③は優劣がつけがたいので、どれが最適であるかは一概にいうことはできません。
私の個人的な見解は、③がおすすめです。
①が嫌なのは、特許にならないリスクが存在していることです。米国では、一旦特許になると、有効性の推定が働き、無効にすることは容易ではありません。また、IDS違反は、訴訟になって初めて審理されるものですが、実際に訴訟にまで発展する確率はかぎりなく0に近いことを考慮すると、IDS違反がある特許でも充分に牽制力を発揮すると思います。
新引例が重要であればあるほど、その文献を提出しなければIDS違反となる可能性が高まりますが、同時に、審査官の再考の結果、特許にならない可能性も高まります。そうすると、文献が重要な場合には、むしろ対応①を採用しにくくなるといえます。また、新引例がつまらないものである場合は、審査官の再考の結果、特許にならない可能性は低いですが、それでも、審査官が考えを変える可能性は皆無ではありませんので、対応①は採用しにくいと思います。そうすると、新引例の重要度に関わらず、対応①はあまりお勧めできないということになります。
②については、審査官が考慮しないことを知って包袋に文献を入れることが、訴訟においてどのような影響をもたらすのか不明であるというのが最大の問題です。2つの考え方ができます。ポイントは、騙す意図です。(a)の解釈がなされる可能性がありますが、(b)の解釈がなされる可能性も完全には排除できません。
(a)RCEをしないまでも、特許庁に文献を提出しているのだから、特許庁を騙す意図は存在していない
(b)RCEをすれば審査官が文献を考慮するにも関わらず、あえてRCEをしないという選択を行った上で文献の提出を行った。「RCEをしない」という選択は、特許庁を騙す意図にほかならない
③は、当然ながら、最も低コストで簡単です。何もしないのですから。しかも、何もしていないので、特許庁に何に証拠も残りません。以下の判例を見ると、騙す意図の立証は、出願人が何もしなければ立証のしようがないように思えます。また、より安全にするためには、例えば、日本の代理人に検討を依頼して、「この文献は、〇〇という理由で、特許性には影響を与えない」というコメントを残しておくのがいいと思います。このようなコメントは、文献の重要性には影響を与えませんが、「騙す意図」の有無には大きな影響を与えます。
「出願人がある文献を知っていて、それが重要であることを知っていたはずであって、そして、それを提出しないと決めたということを立証しても、騙す意図が立証されたことにはならない。」