SK特許業務法人 特許実務メモ 旋回式クランプ事件補足についてコメントがありましたので、補足します。
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> 何度も申し訳ありませんが、もう少し考えてみたところ、いろいろ疑問が生じてきました。
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> 特に化学の分野では、単純に基準を改訂しても問題が残るように思います。
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> 例えば、先の出願と後の出願の間に、先の出願の上位概念の請求項に含まれ得る実施態様が他人によって公開された場合、それを見た出願人は当該態様を新たに追加して優先権を主張した出願をすることが可能ですが、そのような態様を含み得るものとなった請求項全体に優先権の効果を認めるのは、不合理ではないでしょうか?
その考え方は人口乳首事件の裁判官の考え方そのもので、そのような考え方もありだと思います。
ただ、私の個人的な感覚だと、優先権主張を行わなければ、出願日が繰り下げることなく特許を受けることができていたものが、優先権主張により実施形態を追加したことを理由に、実質的に出願日が繰り下がって特許を受けられなくなるというのは非常に不合理だと思います。どちらを不合理だと感じるか、人それぞれなので、人工乳首事件とクランプ事件とで判断が分かれたのだと思います。
また、もしかしたら、基礎出願の段階では実施例が不足していてサポート要件が満たされていないにも関わらず、優先権主張によって実施例を追加してサポート要件を満たすようにした場合を想定されているかも知れませんが、そのような事案の場合、請求項全体について出願日が繰り下げるのは当然だと思います。また、追加した実施例に基づいて顕著な効果を主張するような場合にも、出願日が繰り下げるのは当然だと思います。
私が不合理だと思うのは、このような記載要件や進歩性の問題がなく、優先権主張をしなければ何の問題もなく特許になっていたものが、優先権主張によって特許が取れなくなるという事案です。このような事案があると、怖くて優先権主張ができません。