平成23年法律改正ざっくり1 通常実施権等の対抗制度の見直し
2012.03.06
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平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書
第1章 通常実施権等の対抗制度の見直し
第九十九条 通常実施権は、その登録をしたときは、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる有する。
従来法では、通常実施権を登録していない場合に特許権が譲渡されてしまうと、通常実施権者は、新たな特許権者に対抗することができず、実施を止めるか、新たにライセンスを受ける必要がありました。この問題を解決するために、登録の有無に関わらず、新たな特許権者に対して、自己の通常実施権を主張できるようになりました。
通常実施権はほとんど登録されることがないので、実務に即した改正だと思います。
ただ、例えば、ベンチャー企業の社長が特許権を売り渡した後に、その後に、別の者にライセンスをし、契約書には譲渡日よりも前の日付を記載するといった行為を行う者が出るのではないかと懸念されます。もちろん、このような行為は、私文書偽造に該当するでしょうから刑事的な抑止力が働きますが、金に目が眩んでやっちゃったら、ライセンス契約の現実の日付を立証することは非常に困難であるように思えます。改正本のp10には、「デューデリジェンス」によって取引の安全が確保されると記載されていますが、ほんとにそうなのか、疑問です。ここをしっかりとやっておかないと、ベンチャー企業から特許権を購入することがためらわれるのでないかと思います。条文上は、ライセンス契約の形態について何ら規定がありませんが、対抗には公証を要求する等の何らかの公的な要件を要求すべきであるように思います。
なお、この規定は、実案と意匠には、適用されますが、商標には、適用されません。
第2章 冒認出願等に係る救済措置の整備
第3章 審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止
第4章 再審の訴え等における主張の制限
第5章 審決の確定の範囲等に係る規定の整備
第6章 無効審判の確定審決の第三者効の廃止
第7章 料金の見直し
第8章 特許料等の減免に係る関係法令の見直し
第9章 発明の新規性喪失の例外規定等の見直し
第10章 出願人・特許権者の救済手続の見直し
第11章 商標権消滅後一年間の他人の登録排除規定の廃止