中間処理の腕を上げるために必読の一冊(新・拒絶理由通知との対話)
2010.11.26
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元審査官が書いた本ですが、拒絶理由通知の意味を審査官の立場から解説しており、非常に参考になる一冊です。
私が一番印象に残っているのは、「意見書は、審査官が気がついていないポイントを一点指摘すればよい。」という趣旨のところです。
包袋を見ていると、拒絶理由通知書の内容をそのままコピーしたり、補正後のクレームの内容をそのままコピーしたり、明細書の発明の効果をそのままコピーしたりといった、だらだらとした長い意見書を見ることがあります。
審査官は、意見書を見るときには、手元に拒絶理由通知書と補正書を準備した状態で見ますし、明細書の内容は十分に理解した上で審査をするのであるから、拒絶理由通知書等のコピーなどは、百害あって一利なしだと思っていましたが、この本の内容によると、そんな分かりきったことをいくら書いても特許査定にはつながらないということがよく分かります。ひどいことに、そんな意味のないことを記載して、ページ加算料やタイプ代を請求する事務所もあるようです。
審査官は、一人で年間200件以上の審査をこなすので、各案件に対してそれほど多くの時間をかけられず、拒絶理由の構成が完璧にはならないのは当然だと思います。発明の効果を見逃したり、阻害要因の存在を見逃したらり、引用発明の認定を誤ったりすることがあるのは当然だと思います。
審査官に話を聞くと、審査官は拒絶理由を探しているのではなく、特許をしてもいいと確信できる特許理由を探しているのだといいます。特許にしてあげたいのだけど、立場上、何でもかんでも特許にする訳にいかないから、特許理由を教えて欲しいといいます。
審査官が気づいていない特許理由を教えてあげて、審査官の仕事の手助けをする。これが中間処理だと思います。