バイオ・医薬品の世界には、リサーチツール特許のパテントプールにおけるリーチスルークレームの問題という厄介な問題があります。
実は日米欧の 三極 特許庁では、リーチスルークレームの特許については、リーチスルーの領域(例えば、ある遺伝子を見つけた場合に、その遺伝子を用いて行われるスクリーニング方法によって発見されるであろう医薬品候補物質)については特許が有効ではない
旨の合意がなされており、添付したように公式な政府報告書(日米欧の3極特許庁の報告書)も出版されています。
「リーチ・スルー」クレームについての比較研究
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/pdf/1312-027_b3b_reach.pdf
しかしながら、リサーチツールを製造販売している一部のメーカーは、そのような行政サイドの判断は司法サイドでひっくりかえる可能性もあるとの前提で、「リーチスルークレーム」は有効であり、例えば実験である遺伝子を使って何かの物質をスクリーニングしてその新しい生理活性を発見した場合、その物質を医薬品、農薬、食品添加物などとして、その大学からライセンスをもらった民間企業が実用化する場合、その医薬品、農薬、 食品添加物などには特にその遺伝子が含まれていない場合でもコマーシャルライセンスを求めるというライセンスポリシーを維持している企業もあります。
そのような企業は、そのようなライセンスポリシーを公にすると、各国政府から行政指導を受けたり、公正取引委員会などで問題にされる可能性があるので、あえてそのようなライセンスポリシーを公にしないという方針をとっているケースが多いのが実情です。
以下、公正取引委員会の独占禁止法の知財ガイドラインから引用します。
(2)技術の利用と無関係なライセンス料の設定
ライセンサーがライセンス技術の利用と関係ない基準に基づいてライセンス料を設 定す る行為、例えば、ライセンス技術を用いない製品の製造数量又は販売数量に応じてライセンス料の支払義務を課すことは、ライセンシーが 競争品又は競争技術を利用することを妨げる効果を有することがある。したがって、このような行為は、公正競争阻害性を有する場合 に は、不公正な取引方法に該当する(一般指定第11項、第12項)。
なお、当該技術が製造工程の一部に使用される場合又は部品に係るものである場合に、計算等の便宜上、当該技術又は部品を使用した最終製品の 製 造・販売数量又は額、原材料、部品等の使用数量をライセンス料の算定基礎とすること等、算定方法に合理性が認められる場合は、原則として不公正な 取引方法に該当しない。
(7)研究開発活動の制限
ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術又はその競争技術に関し、ラ イセ ンシーが自ら又は第三者と共同して研究開発を行うことを禁止するなど、
ライセンシーの自由な研究開発活動を制限する行為は、一般に研究開発をめぐる競争への影響を通じて将来の技術市場又は製品市場に おけ る競争を減殺するおそれがあり、公正競争阻害性を有する(注18)。
したがって、このような制限は原則として不公正な取引方法に該当する(一般指定第 12 項)。
ただし、当該技術がノウハウとして保護・管理される場合に、ノウハウの漏洩・流用の防止に必要な範囲でライセンシーが第三者と共同して研究 開発 を行うことを制限する行為は、一般には公正競争阻害性が認められず、不公正な取引方法に該当しない。
(注18)プログラム著作物については、当該プログラムの改変を禁止することは、一般的に著作権法上の権利の行使とみられる行為である。しか しな がら、著作権法上も、ライセンシーが当該ソフトウェアを効果的に利用するために行う改変は認められており(著作権法第20条第2項第3号、第47 条の2)、このような行為まで制限することは権利の行使とは認められない。
具体的には下記の公正取引委員会のHPを御覧ください。
http://www.jftc.go.jp/dk/chitekizaisan.html